*BL Original novel・1*
□口下手
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「や、やめて下さい!なんです?モテなかったんですか?!だからって僕で発散させないで下さい!」
「はあ?!」
カチンと来た。
「俺がモテ無いわけ…」
って、違うだろ!俺!
突っ込むところはそこじゃない!
「お前だけだ…」
って、耳元で囁いても、タイミングが完全に違う。
「僕は…僕は宮元さんのなんなんですか?!」
ぐっと言葉に詰まった。
身体の下のマリは、真っ赤な顔してまだ睨みつけてくる。
言葉に躊躇して、視線を外した俺に、まだ追い打ちをかけてくる。
「宮元さんが欲しいのは何なんですか?!僕の仕事用の声?家政婦?体はいらないでしょう?別に宮元さんホモじゃないし!僕だってそうです!どうぞ、どこかでお好きにしてきて下さいな…」
あー!
ごちゃごちゃうるせー!
マリの腿を膝で押さえたまま、臭いと言われたシャツを脱ぎ棄てた。
口じゃ上手く言えねえ。
満足に黙らせる方法がわからない。
マリのシャツをズボンから引き摺り出した。
「何とか言ったらどうですか!」
言えねえからやるんだろうが!
マリのベルトに手をかけたら、はっと一瞬、マリが息を詰めた。
「…僕は…宮元さんが…全部好きですよ…」
降参だ。
参った。
マリの上に体全部で覆いかぶさった。
ソファーの上に重なって、マリが俺の背中に腕を回した。
背中を撫でる手の平は、冷たくって、ぞくっとする。だけど、俺の口から出る息は熱いままで、
「マリ…」
と、耳元で必死に囁いたそれだけで、マリはぎゅっと抱きついてきた。
「あ…う…お、お前だけだ…から…」
なんで日常の言葉はこんなに上手く出てこないんだ?
「僕も、宮元さんだけです。宮元さんしか知らないし…。だけど…その…そのせいで!下手くそで!」
俺と違って、マリは思ったことを口に出せるのな。
うらやましいし、可愛いと思う。
「俺しか知らねえ奴が、何と誰とを比べて下手くそだと言ってるわけ?なあ…」
腕の中の細い身体がめちゃくちゃ愛しい。
文句を言うその声も、睨みつけてくる目だって、可愛くてたまらない。
「お前は俺のものだし…、俺はお前のものだろう?なあ?」
あー、すんなり言えた。
胸に頭を擦り付けてくるマリが堪らない。
「…ここでいいか?向こう行くか?」
あっちの部屋いかねえと道具がな…。
返事を待たずに、マリを抱え上げた。
いつもなら暴れるマリが俺の首にしがみ付く。
あら…。
たまには素直になってみるもんだ。
額にちゅっちゅとキスを振らせたら、上目使いに睨んできた。
目は口ほどに物を言うな、おい。