*BL Original novel・2*
□ビブラート
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シャワーを浴びて、部屋に帰るとベッドに飛び込んだ。
なぜか、子機をそのまま持ってきてしまった。
まあ、いいや…。
枕の横に子機を置いたまま、すぐさま襲ってきた眠気に身を任せた…。
妙に気分がざわついてるのに、体は滅茶苦茶疲れてる…。
まだ眠りに落ちて間もない、寝惚けた意識がなかなか起きてくれない…。そんな中で電話の音が鳴っている。
起きなくちゃ……。
あいつからかもしれない…。
すぐに電話の音が止んだ。誰かが出てしまったのかも。それならそれで、このまま起こさないで欲しい…。
「……悠也さん!悠也さん!」
母親に揺す振られてどうにか目をこじ開けた。
「…何?僕ならもう寝たって言って…」
「どうしましょう!功也さんが!功也さんが交通事故にあったって!」
「えっ!」
弟の功也の事件に、僕は飛び起きた。
「事故って?!あいつ、…塾の帰りか。どうしたって?電話誰から?!」
「功也さんから…」
動揺している母親を残し、階下の電話へと向かった。
「もしもし!功也?」
「…あ、悠兄…。どうしよう…。俺…」
とりあえずは声が聞けて安心した。
「怪我は?今どこに居るんだ?」
「今、病院。あ、俺は怪我してないんだけど…。……自転車で人にぶつかっちゃって…。怪我させちゃったみたいで…。どうしよう…」
「どこの病院?今から行くよ。大丈夫そうなら母さんはうるさそうだから置いてくから…。ああ…うん……」
支度をしに部屋に戻ると、転がっていた子機に舌打ちをした。
なんで、こんなに面倒ばかり。
これも全部、大嫌いなあいつのせいだ、なんて、木月の顔が浮かんで、余計に無性に腹が立った。