BASARA 佐幸佐ss 3
□One for Two
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It is one for two.
〜二人で一つ〜
「どう?旦那、美味しい?」
「んぐんぐ……」
旦那は俺様の作った夕飯をテレビを見ながら無言でむしゃむしゃ食べている。
「今日はね、隣町のスーパーが大安売りしてたから、俺様ダイエットも兼ねて走って買い出しに行って来たんだよ!卵パックとかお1人様1パックとかって切ないよねえ。現役の時だったらパパッと変化でもして何パックか買えたのになあ。って。いけね。俺様ってば、旦那にしか化けられないんだった。あは。……って、ねえ?俺様の話聞いてる?」
旦那と結婚して専業主夫になった俺は、一日中旦那の帰りを待ちわびてたんだ。もうちょっと、こう、かまってくれたっていいじゃない?
それが、だよ?
「佐助。うるさい」
とか、テレビの音が聞こえないって理由でそんなこと言うんだよ?
「だ、旦那は、俺様とテレビとどっちが大事なの?!今日だって、少ない旦那の給料で必死にやりくりして、それでもスタミナ万全の美味い料理作ってやろうって頑張ったのに。全然味わってくれてないし!」
「某は仕事で疲れてるのだ」
はあ、なんて溜息つきながら旦那は箸を置いた。完食済み。
「寝る」
そう言って立ち上がろうとした旦那の腕を掴んだ。
「御馳走様、は?それに、もうちょっと俺様の話を聞いてくれたっていいじゃない?!」
旦那はもう一度どすっと座布団に腰を降ろした。
なんか不機嫌。なんだよ、もう!
「あのさ。俺様がどんな思いで旦那の帰りを待ってるか、わかってんの?いってらっしゃいと送り出してから、事故にあわないか、変な虫が寄ってこないか心配で心配で。一日中、旦那のために頑張って家事こなしてさ」
「別に、心配してくれなどと頼んでおらん」
むっかー!!
旦那はちゃぶ台に肘をついて、そっぽを向く。
「あのね!言いたかないけど、忍び隊の長にまで登りつめた俺様が、その華麗なる地位を捨ててまでこうして旦那のために専業主夫になったんじゃない?それもこれも、あんたが俺様の面倒を一生見るって言ってくれたから……」
「また働きに出ればいいだろう?」
「そんな問題じゃないんだよ!だ、だ、旦那なんて…旦那なんて大嫌いだぁぁぁあ!」
俺はとうとうエプロンの裾で顔を覆った。
新婚ほやほやの頃なら、「佐助…悪かったな」なんて、優しい声で囁いて、俺の肩をそっと抱いてくれたのに。
「うるさーーい!某の想いを疑うのか!こ、このバカ者ーー!!」
って、ちゃぶ台をひっくり返され、俺は呆然と……さめざめ涙を流しながら散らかった食器を片づけるしかなかった。
旦那がこんなになってしまうなんて…。
愛は冷めてしまったのだろうか…。
旦那はそんな俺を無視して、すくっと立ち上がった。足早に俺の横を通り過ぎる。
這いつくばった床から旦那を見上げると、
「うっ」
と、旦那が急に口元を手で押さえた。そしてトイレにダッシュで駆けこんだ。
「えっ?だ、旦那!具合悪いの?え?!夕飯のせい?ど、どうしよう。俺様のせい……」
旦那の後ろでおろおろしている俺様の腕を旦那が掴んだ。
「お前のせいじゃない…」
「え?」
旦那が少し青ざめた顔を見せる。
「今日は朝から何度かこうなるのだ。別に具合が悪いわけでもないのだが」
「え、でも、それって十分具合悪いって…」
「それに…。すまん、佐助。あの……」
旦那が俺様の肩越しに、散らかった茶の間に視線を送った。
「妙にいらいらしたりしてしまうのだ」
旦那がすまなそうに、しゅん、とした目で俺様を見る。
「いいって、いいって。仕事のストレスかな」
「体はだるいし、妙に一日中眠いし……」
ん?
んん?
それって、もしかして、もしかして!
「も、もしかして!だ、旦那!!」
急に目を輝かせた俺様を、旦那は怪訝そうな顔で見詰める。
「オメデタかもよ!!!」
「な、何だと?!!」
俺様は無我夢中で旦那の体を抱き締めた。
「お、俺様と旦那の愛の結晶を授かったのかもしれない!!」
そうだ!そうに違いない!
「なんで佐助ではなく某なのだ」
おもしろくないって声で旦那はぼやく。
「そりゃあ、あんた。閨での関係上、そういうことに……」
「ずるいぞ、佐助」
うう。
つらそうな旦那を見ると、ほんと、今さら申し訳なく思えちゃう。
代れるものなら、その体のつらさは代って上げたいよ。
「ごめんね、旦那…」
抱き締めた旦那の背を何度も何度も撫でてやる。
旦那は安心したように、俺の胸の中でゆっくり目を閉じる。
「俺様、忍び隊に求人募集ないか、明日聞きに行ってくるよ。下っ端からでもかまわないさ。……旦那は体を労わって、ね。戦とか、胎教によくないしさ。……ねえ、旦那?」
「……何だ?」
「幸せだね」
「……うむ」
あなたと二人。
二人で一つ。
二人が一つになったよ。
(おしまい)
後日談→OneTwo…
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