BASARA 佐幸佐 SS

□狐の嫁入り
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「旦那、朝だよ」

ぐっすり眠り込んでいるその顔を覗き込む。
朝の陽射しが当たってるのに、ちっとも起きやしない。
頬をつんつん突いてやる。
うーん、とは言うが、起きやしない。
もう少し寝かせておいてあげるかな。
甘いね、俺様。
仕方がない。
寝顔がこんなに可愛いんだから。

さてっと。
この隙に、戦続きで溜まった洗濯物でも片づけちゃいますか。
起きたら起きたで、うるさいんだから。

「佐助…」
なんて、寝言に振りかえった。
はいはい。
俺は、ここにいますよっと。
でも、ちょっと働いてきますんで、いい子にしててねー。

部屋の外に出てみたら、日差しの中で雨が降り出した。
お天気雨ってやつですか?
困ったね。やむのかな、これ。

空を仰いでいれば、後ろでもぞもぞ動く気配がした。
お?起きたかな?

あらー。
見事に真っ赤な目。
夜更かしでもしたのか?
ごしごしこすんないの!

「佐助」
「ん?」

旦那が両手で顔を覆う。
どした?

「佐助…」
「何よ?旦那。どしたの?」

旦那がゆっくりと起き上った。
胸には包帯が巻きつけられて、痛々しい姿だ。

また怪我しちゃったんだっけか?
怪我?
どこで?

旦那がふらつく足取りで立ち上がった。
「ちょ、大丈夫?」
手を貸そうとする俺を無視する。
「旦那?どこへ?」
ふらふらと歩き出す旦那の後を追う。
俺のことなど、目に入らぬようなその態度。



なんだ?
なんで俺は、こんなに…。
こんなに頭が痛い……。





旦那が行き着いた部屋の中に、俺は居た。

「佐助、まだ目を覚まさぬか?」

何言っちゃって…。

って、俺が寝てるよ。

俺…。

死んだの?
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