BASARA 佐幸佐 SS

□探して。
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夕焼けの土手の道を、幸村は学ランの前をはだけたまま走っていた。
部活が終わり、着替える手間ももどかしかった。
早朝見かけたものが気になって仕方がない。


まだいるかな?
もう、誰かに拾われたかな?


土手の下の草むらの中に、ポツンと段ボール箱が置かれているのが見えた。
幸村は土手を駆け降りた。

「クゥン」

「まだいたのか、お前…」

手の平に収まりそうな仔犬を幸村は箱の中から抱きかかえた。

「ごめんな。寂しかったろ」
仔犬は幸村の鼻をぺろりと舐めた。
「はは。お前腹減ってないか?学食のから揚げ残してきたぞ?…いらない?あ、牛乳もあるぞ」
手の平に少し牛乳をこぼしてやると、仔犬はしっぽを振りながらぺろぺろと舐め始めた。
「某が飼ってやれればいいのだがな…。居候の身なんで、すまぬな。だが、飼い主を探してやることはできるかもしれないぞ」
幸村は仔犬の頭をそっと撫でた。


「お前とこうして巡り合ったのも運命なんだろうな」


幸村の目が優しく細められた。


「某もな、探している人がいるのだ。…もしかしたら、それはお前なのかもしれないな」


手の平の牛乳を舐め終えた仔犬がねだるように幸村を見上げた。


「あいつは、某より悪いことをいっぱいして来たから、まだ人として生まれ変われぬのかもしれぬな…。だから、お前がもしかしたら佐助か?」


仔犬が幸村の頬に頭を擦り付けた。

「そうか、お前が佐助か!あは。可愛いな、佐助は!」

幸村の目の端に、かすかに涙が溜まった。

「佐助……」


「何?旦那?」


仔犬がしゃべるはずもなく、背後から聞こえる、聞きなれた声に、幸村は固まる。
振り向く勇気はない。


「好き勝手言ってくれちゃって、まあ…。ま、いいけど。あ、そいつさ、俺様も朝見かけて気になっていたのよ。旦那が飼ってくれんの?なら安心だ。一応、仔犬用ドッグフード持って来たけど、食うかな、こいつ」

「某の家では飼えないんだ」

「あら、ほんと。じゃあ、うちで飼うかな」

「佐助…」

「犬に佐助って名付けないでね。俺様、ここにいるから」

「ば、ば、馬鹿者!!!」

幸村は背中から抱きしめてくる影に目を閉じた。もう、涙は頬を濡らしている。

「ずっと…ずっと…、生まれて17年もお前を探していたぞ…」

「ごめんね、旦那。俺も結構がんばって探してたんだよ」

「お前の探し方が下手なんだ!!!」

「ごめんてば」


幸村の腕の中の暖かさに、仔犬は眠りに落ちていく。



探し求めていた……。
この暖かさを……。




〜おわり〜



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