BASARA 佐幸佐 SS

□こぼれる。
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「幸村が戻らん。探してこ…」
大将の言葉を最後まで聞かずに駆けだした。
動揺しまくり、鴉も出さずに走りだした。

俺様が目を離したんだ。
俺様がそばを離れたんだ…。

どしよ、どしよ、どしよ……。


だから、後ろから、

「探したぞ、佐助」

なんて、声をかけられれば、腰がへなへなと砕けた。
「お前を見失ってしまってな。心配で探していたのだ」
なんてにっこりと言われても。
「あーのーねー…」
「無事で何よりだ、佐助」
旦那が手を伸ばす。
俺が旦那を見失ったんだ。
突っ走る旦那に追いつけなかった。
激しく襲う自己嫌悪…。旦那にもしものことがあったら…、なんて、一瞬でもよぎった考えがいやだ。
「佐助…」
無事で…無事でよかったあああ…。
涙腺崩壊。
「だ、だ、旦那ああ!」
旦那の体に飛びついた。
あー、生きてるよ、この人!よかったあ!
「泣くな、佐助。戻るぞ」
「…ぐしっ。ずず…。うえっ…。無理…」
旦那の肩に泣きながら顔を埋める。
「腰ぬけた…歩けない…」
「……はぁ…」
ため息ながら、俺の体に腕をまわして、背中をぽんぽんっと叩いてくれる。
「少し、休んでいくか」
旦那の肩先で頷いた。
あー、もう!
旦那を見つけた(見つけてもらったんだけど)感激で…。
「旦那…」
「ん?」
旦那の耳元で囁いてみた。
「…したく…なった…」
「な!な、な!は、は、は!」
破廉恥なも言えないほど慌てたかと思えば、
「…腰が抜けてる癖に、何を言う」
と意地悪なことも言う。
「ぐしっ…だ、だって…さ、ぐす…、俺様…絶望の淵から、天国に舞い戻った気分でさ…、ずず…」
「鼻を垂らすな!…まったく…」
マントで拭うもんね…。
「…その顔では陣に帰れぬな…。どこかで顔を洗うか?」
「…ずず」
うん。
マントで顔を拭き拭き、旦那に手を引かれて、とぼとぼと歩きだした。
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