BASARA 佐幸佐 SS
□花を咲かそう
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戦場で。
バチリと目が合った。
敵と味方で。
「くだらん」
そう言った?
馬上の右目の旦那が、刀をおさめた。
あれ?
俺様は戦う振りでもしようかと思ったのに。
「来い!」
ずかずかと間合いを詰められ、上から腕を取られた。
「ちょ、ちょ!旦那!」
嘶く馬の背に俺を掬い上げると、
「はあ!」
掛け声とともに駈け出した。
右目の旦那と、俺様と。
戦場を背に、どこに行くのだろう……。
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と、いうのが数刻前のこと。
今は……、目も当てられない落ち込みっぷりの右目の旦那の世話で大忙しだ。
「はぁ…俺としたことが…はやまった……」
「いきなり、戦放り出しちゃったねえ」
「言うな」
「あーあ。後で大目玉だねえ。てか、命あるかな?」
「う…」
乱れた前髪を後ろへとかき上げてる。
いらいらしたときのしぐさ。
あれから、まだ二人、馬の背にいた。
行くあてもなく、とぼとぼと…。
「だいたい、どこに行こうとしたのさ?」
「考えてなかった…」
「はあ?」
あ、またどっぷり落ち込んだ。
「おめぇがいきなり目の前に現れちまうから、いけねえんじゃないか!」
あ、なにそれ。
「しょーがないじゃん!今日は武田と伊達がぶつかったんだから」
「お前をやんなきゃなんねえのかと思ったら、よ。とたんに馬鹿らしくなった…」
「んで、俺様をさらって逃げ出しましたっと」
「……はぁ…。その通りだ…」
喜んでいいやら、悲しんでいいやら、こちらも対応に困っているわけです。
「だいたいさ、適当にやればよかったじゃん。てか、俺を狙わなければいいだけじゃん。てか、まあ、そっちの大将の首を俺に渡せばいいだけじゃ…」
「少し黙れ佐助」
あ、言いすぎた?
はぁ…と大きなため息をついて、両腕でぎゅっと俺を抱きしめた。
だ、旦那!
た、手綱手綱!
「戦場放り出して、敵の忍びと駆け落ちしたなんて、どの面下げて帰れるんだ…」
え?
ええ?!
駆け落ちなの?!これ??!!
そ、それはまずいでしょ?!