BASARA 佐幸佐 SS

□ぼくのせんせ
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「しゃしゅけしぇんしぇい!おっきくなったら、しょれがしとけっこんしてくだしゃれ!」

「うんうん。幸ちゃん、わかったから、お握り頬張りながらしゃべっちゃだめだよぉ?あ、ほら、まーくんの顔がご飯粒だらけだ…。あ、じっとしてて、まーくん!」

幼稚園のお弁当タイム。
子ども好きなことだけがとりえな俺は、ここの保育士。
弱冠二十歳…忙しすぎて恋人募集する暇もないのだが…。

「しゃしゅけしぇんしぇい!!やくそくでござる!!」

こうして可愛い園児が愛をささやいてくれる。まあ、それはそれで、仕事が恋人っす。

あ、いけね。
まーくんが泣きだしそうだ。

「しゃしゅけしぇんしぇーー!」

この、俺にまとわりついて離れない、元気いっぱいな子は幸ちゃんこと、幸村君。大きな瞳で、太陽みたいな子。おおっぴらに愛を叫んでくれる可愛い子。

「う、うう…」
「ごめんね。ほら、きれいになったよ」

この、引っ込み思案でおとなしい子は、まーくんこと、政宗君。いいとこのおぼっちゃまらしい。
でも、切れると怖い。

ごっつん!!

ほら、まーくんが幸ちゃんを泣きながら殴った。

「がーーーーーっ!!」
「うーーーーーーーっ!」

二人が取っ組み合いを始める前に、首根っこ掴んで持ち上げて、椅子に座らせて…。
ふぅ……。





ある日、幸ちゃんが引っ越すことになった。
家庭の事情で、親戚の家に預けられるらしい。

「しゃしゅけ…ぐし…しぇ…しぇ…」
俺の腰に目いっぱい腕をまわして離れようとしない幸ちゃん。
幸ちゃんの頭を何度も何度も撫でてやった。
「また、会えるから。先生、ずっとここにいるからね」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
ぎゅうっと小さな体を抱きしめた。
「しょれがしが、おおきくなるまで、ここでまってるでござるよ!!しゃしゅけしぇんしぇーーーー!」
意外な男らしさで、涙をふっ切り、大きく手を振って、迎えの車に乗り込んでいった。
いつもケンカばかりしていたまーくんも泣いていた。






あれから10年……。
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