BASARA 佐幸佐 SS
□不器用な魚
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教室で、佐助たちがわいのわいのと騒いでる。
部活に行くために着替えをしていた俺に、その帰宅部連中の話が聞こえてきてしまう。
「佐助って上手いんだろ?」
うひゃうひゃ話してる内容は健全男子のそれで。
「あ、そう見える?」
なんて、カッコつけてぼさぼさに伸びた前髪を掻き上げてみたりしてる。
こいつは…。
髪の毛なんかオレンジ色して(これは生まれつきなのだが)、ワイシャツの下は迷彩のTシャツなんか着込んで、首からはネックレスなんぞ下げ(俺が贈ったものだが…)、少しチャラチャラした雰囲気がある佐助。
学校で付き合う連中も自然、そんなやつらが集まって来ているようだ。
「まあ、俺様のテクにメロメロだねえ」
調子に乗ってほざいてる。
「なあ!見せてくれよ!お前の彼女!」
「あーダメダメ。清楚な深窓のお嬢様なんだ。お前ら何か見せたら目が腐っちまう」
「うはあ!で!そんなんとやっちゃってんの?!」
ちらっと佐助が俺を見たような気がした。
学校ではもちろん二人の関係は秘密だ。
一緒に住んでいることすら内緒にしてある。
ただ…佐助には恋人がいて、いつも幸せ全開だっていうのは周知の事実。
その相手が誰だかはシークレットらしい。
「まあねえ。ほら!昼の顔と夜の顔ってやつ?」
バカらしい…。
おお!とかそんなことに感嘆の声を上げて喜んでいる童貞連中をちらりと見て、荷物を抱えて教室を出て行った。
「なあ…真田ってば怒ってた?あいつ堅物なん?」
「ああ、旦那は下ネタ系苦手だからねえ。というか奥手?」
「佐助、幼馴染なんだろ?少しは教えてやれば?」
あはははは、と、人をネタにした話が少し聞こえてきたが、無視だ。
覚えてろ、佐助。
*
ベッドの上で本を読んでいると、ゲームに満足したのか、佐助があくびをしながら入ってきた。
俺の横にもぞもぞと入ってくる。
「ゲームもほどほどにしろ」
「明日の弁当の仕込みしてたんですぅ」
学校とは違う家での顔。
チャラチャラして見せてるのは、その髪の色のいいわけが面倒だって知っている。
家では、まめに、俺の世話などやいている。
読みかけの本をパタっと閉じて、枕元のリモコンで部屋の電気を消した。
「…おやすみ、旦那…」
俺の布団を奪いそうにしながら体を丸める佐助にそっと手を伸ばした。
「誰が上手だって?」
ぎくっと佐助が体を固くするのがわかる。