*BL Original novel・1*

□ボイスん。アタック@
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あなたの声は、あなたの武器。

 僕の声は、あなたを捕える罠になる。





イスん。アタック



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マネージャーさんから、台本が届いてるという連絡を受け、僕はラジオCMの収録現場から、そのまま事務所に向かうことにした。
暗くて狭いブースに長時間閉じ込められていたせいで、夕陽でさえ目に眩しい。
乾いている冬の初めの空気は油断大敵で、僕はまだ早いマフラーを口元まで引き上げた。


「おはようございます!」

一瞬の緊張の後、事務所のドアを開け、出来るだけ元気に挨拶する。
新人の心得です!
僕の所属する事務所〈キーボイス〉は、いわゆる声優事務所だ。業界ではまあまあ大手さんらしい。
事務所の養成所の研究生から、正式な事務所の所属になったのは今年の春のこと。半年以上経つものの、事務所の中では、一番の下っ端なみそっかすなのに変わりはない。
この頃、どうにか仕事を回してもらえる機会が多くなった。
…とはいっても、番組レギュラー(その番組の脇役を毎回一手に引き受ける役)とか、少年Aとかだけどね。

いつかはオーディションに受かって、名前のある役を掴みたいなあ、と野望を膨らます、木月真理≪きづきまさと≫二十二歳、キーボイス所属です。よろしくお願いします!
……なのであった。

僕が入り口でキョロキョロしていると、

「木月、こっちだ」

事務所の中には5、6人の人。デスクの人とマネージャーさん。
僕に電話をくれた神崎マネージャーが僕を呼んでくれた。 
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