*BL Original novel・1*
□ボイスん。アタックA
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「ここでいっか?」
宮元さんが見上げる先には、居酒屋雑居ビルの居酒屋の看板。事務所から駅に向かう道すがらで、僕も何度か行った事があるビルだ。
サラリーマンたちの帰宅時間と重なって、大勢の人だかりも出来ている。
「飲めるの? マリちゃん?」
降りてくるエレベーターを待ちながら、そんなことを聞かれる。
宮元さんはご機嫌だ。
「今日はバイトないから大丈夫です」
「はは。んじゃなくって、酒飲めるのかって」
「あ、それはもう、結構飲みますよ! カクテルから焼酎までオッケーです!」
僕はガッツポーズをして見せた。
宮元さんはククッと喉で笑って、
「いや、年がさ」
と、肩を軽くすくめる。
「僕、二十二ですよ? もう……」
少し頬を膨らませて怒って見せては説得力ないか……。
ふんっと、胸を張ってみせる。
「おーマジで? あはは、えらいえらい」
宮元さんは目を細めて、優しく笑った。
童顔のせいで未成年に間違えられることもたまに……ときどき、いっぱい、そりゃあるさ。財布にはちゃんと免許証持ち歩いていますです。バイトにも忘れずに持参が命じられています。