*BL Original novel・1*

□ボイスん。アタックF
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朝から劇場は賑やかだった。

僕が初めて宮元さんに出逢った劇場だ。

大道具が舞台の上では組み立てられ、照明さんや音響さんも忙しそうに準備を始めている。

楽屋では衣装に着替える役者さんたち。
お化粧の匂いも立ち込めている。

マリの顔はいじるな、との演出家さまの禁止令で、僕は衣装だけさっさと着替え、うろうろしていた。

衣装、とはいうものの、僕の場合、普段そのまんまだ。
自前の中でぼろいの用意しろって言われたけど、やっぱりそのまんまなんですが……情けないことに。

古いTシャツ、破れたジーパン、穴の開きそうなスニーカー。
ただ、Tシャツの上に着ている大きな綿シャツは宮元さんのだ。そのサイズの二回り大きい綿シャツは、僕が着ると、いい感じにださくなる。
どっからこんなぼろっちいの持ってきたんだ?あの部屋の化石になっていたやつかもしれない。
こわ。
くんくん。思わず袖を鼻に当てた。

「こんなところでなにやってんだ、お前は」

劇場のロビーで宮元さんと鉢合わせした。
さっきまで忙しそうにあっちこっち動き回っていた宮元さんに、「暇だから」とはまさか言えない。
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