*BL Original novel・1*

□優しい傷A
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リーン。リーン。

懐かしい感じの呼び出し音が鳴り響いている。

ぎしぎしと板を踏む足音。

ゆっくりと覚醒していく意識。
見覚えのない天井を見上げ、ああ……と、起きることにする。
ぎしっと体が痛んで、這ったまま襖を開けた。

廊下では、パジャマ姿の千堂さんが、しゃがみこんでメモを取っていた。
僕に気が付き、ふっと目を細めた。
よく見ると、受話器を耳に当てている。
邪魔しちゃ悪いと、僕は覗き込んでいた顔を引っ込めた。
ついでにもう一回布団に潜り込んでしまった。
ちょっとして、襖が開く音がしたけど、僕は再び眠りに落ちてて……。


次に目が覚めたときは、いい匂い付きの、布団を揺さぶる振動で。

「朝飯できたぞ。起きてもらえるかなー?」

うっすら目を開けた視界には千堂さんのアップ。

「…おはようございます……」

「ごめんな。寝かしてあげたいけど、天気が崩れそうだからさ。早めに行こう」

部屋に差し込むカーテンからの光は弱弱しい。
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