*BL Original novel・1*

□お巡りさんの休日
1ページ/4ページ

制服姿しか見慣れていなかった千堂さんの姿は、だけど、すぐに見つけられた。
千堂さんも僕を見つけると、軽く手を上に上げた。

日に焼けた顔と優しく細められる目。
すらりと背が高く、ジャケット姿が大人の雰囲気を醸し出している。

「千堂さーん!」

駆け寄る僕が小石に躓き転びかけるのを笑いながら千堂さんが受け止めた。

「相変わらずのおっちょこちょいめ」

「す、すいません」

「いえいえ。随分積極的だなって思ったけど」

「ち、違います!」




あの夏に別れてから、久しぶりに会う千堂さんの笑顔だ。
うれしくなって、飛びつきたいとは思ったけど、飛びついたわけじゃないから!

「ごめんね。遠かったろ?県外出るの手続き面倒でね」

「いえ!少し遅れてしまってすいません」

千堂さんが僕の頭に、ぽんっと手を置いた。

「俺も今来たとこだ。…さあて、なんかおいしいものでも食べようか?」

「はい!」

今日は一日、変身を解いたお巡りさんを独り占めにできるんだ。

あまり、電話もメールも寄こしてくれないこの少しつれないお巡りさんに、僕は勇気を持って電話をかけた。

「どしたの?」

なんて、優しい声が聞こえたら、

「どうも…。何もないけど…」

って、言葉に詰まってしまった僕。
だけど千堂さんは、

「さびしくなった?」

って、たぶん電話の向こうで目を細めてた。
素直に頷いた僕に、

「明日、俺休みだけど、和喜は暇?」

なんて、何でもない風に言ってくれた。
会うために、あーだこーだ理由なんていらなかったんだって、胸のつっかえが取れたような感じがした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ