*学園*
□王子様は御機嫌斜め!
1ページ/4ページ
(王子様:兎川命 視点)
なんでこんなやつと同室になっちゃったんだ?!
やだやだやだ!
ぜっんぜん!面白くない!
「ふぅ。…コーヒー飲みたい」
一生懸命宿題やってたらさ、コーヒーでも飲みたくなるじゃん?
まったく…気が利かない。
……返事がない。
聞こえないのかな?って振り返ればベッドに寝転がって雑誌を読んでいる同室者は、僕の方に顔を向けようともしない。
「コーヒー」
もっかい言ったら、やっと、雑誌を少し下げて、ちらりと僕を見た。
「…持ってくりゃいいだろ」
ええ!!
僕に自分で取りに行かせる気なの?!
信じられない!
「篠ノ井が持ってきて」
ちょっと可愛く言ってやった。
「俺は別に飲みたくねえもん。ご自分でどうぞ」
な!
僕のおねだりが通用しないなんて!
信じらんない!
「前の同室者は僕の言うことを聞いてくれたよ!」
椅子をキシキシさせて抗議してやる。
しばらく間があって、
「……あー…、そういや、……王子様だったな、お前」
そ、そういや、とかって信じらんない!
かあって、顔が熱くなるのを感じる。
僕にはいっぱいファンが居て、親衛隊までぎっしり居て、みんな可愛い可愛いって言ってくれるんだ!
ずっとずっと、僕だけ特別にみんなから優しくされるんだ!
「王子様」なんて、崇められるほどなんだ!
「僕、コーヒー入れに行ったことないもん!」
ちょいむきになって、篠ノ井を睨みつけた。
「下に行けば誰かしら居るだろ?教わってこい」
あーーもう!
篠ノ井の手から読んでた雑誌を取り上げた。
ふう、なんて溜息つかれてさらにむかつく。
「わーった、わーった」
お?
「じゃんけんしてやる。ほら。最初はグー。じゃーんけーん…」
わかってないじゃん!!
「ぽん!」
とか掛け声かけられて、思わず握りしめていた拳をそのまま突き出してしまった。
「はい。王子様の負け。いってらっしゃい」
「もういい!」
また雑誌を読み始めた篠ノ井に、いーーっとしてやってから、僕は鼻息荒く部屋から飛び出した。
ちょうど隣の部屋から出てきたやつに、危うくぶつかりそうになった。
「おっと。大丈夫?」
お隣さんは、人の良さそうな顔でいつもニコニコしている向田だ。
その手にはココアの茶色い小袋が。
「僕もココア飲みたい!」
コーヒーよりそっちがいい!
向田は、ニッコリ笑って、
「いいよ。…ゆう!やっぱ手伝って。マグカップ持ちきれなそう」
部屋の中に向かって声をかけた。
中からたたたっと走ってきたちっちゃいのは、向田の腕にくっついた。
「部屋に届けてね!僕、まだ宿題があるから!」
仲が良さ気なお隣さんにもなぜかむかっ腹を立て、僕は部屋へと戻った。
「お早い御戻りで。さってと。俺先シャワー浴びるよ?」
またもやこいつは信じらんない!
「シャワーも僕が先に決まってんだろ!」
僕の抗議無視して、篠ノ井は着ていたトレーナーをがばっと脱いだ。
それを事もあろうか、僕の頭に投げつけてきた!
「むは!何するんだ?!」
上半身裸な篠ノ井は、にやりと笑って僕に手を差し出した。
「よろしければご一緒しますか?王子様?」
「ふ、ふ、ふざけんなーー!!」
肩をすくめながら、篠ノ井はユニットバスへと消えてった。
僕は閉じたそのドアに頭の上に乗っかっていたトレーナーを投げつけた。
あーもう!
勝手が違う。いつもと違う。
おかしいよ?
みんな喜んで僕の言うことを聞いてくれるのに。
なんでよりによって同室者のあいつだけあんななんだ?!
こんなんじゃ、この先、どうやって生活していいかわかんない!
頭を抱える僕の部屋のドアがノックされた。