*学園*

□お菓子と萌え
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(書記:持田 視点)



テーブルの上に置かれたポテチに、小路が通りすがりに手を伸ばしてパリッと食べた。

「小路、原先生とは上手くいっているみたいだね」

一瞬手を止めて僕の顔を驚いた顔して見詰めたけど、どさりと身近な椅子に腰を降ろした。

「あーい変わらず情報早いね、もっちだ君。……みんなには、内緒だからね」

うんうん、と僕は頷いて見せて、ささどうぞ、とポテチをすすめた。

可愛いけれど軽そうに見られる2年の小路類(こうじ るい)。見られる…というか、実際あっちふらふらこっちふらふらとしていた時期もあったしな。この細い体に似合わず、よくやるな、と思ってた。
現在は先生と熱愛中…と。こりゃ、本気かな?

「誰かコーヒー持ってきて!」

談話室に入ってくるなり、王子様が命令なすった。

「は、はい!今すぐ!」
「あ、俺が、俺がすぐに!」

1年数名がパタパタと給湯室に駆けて行った。ぽわあん、と夢見るような顔で…。

部屋に立ち込めるオーラで思わず振り向いた。
王子様の名に相応しいきらびやかなオーラだ。
2年兎川命(とがわ みこと)。
ふっわふわの茶色い髪。透けるような白い肌。お人形さんみたいな可愛い顔。
最近、親衛隊を引き連れていない。
ふむふむ。この変化も興味深いですな。

「あ、お菓子」

と、王子様もポテチに手を伸ばしてきた。

僕の座るテーブルには、常にお菓子が置かれている。みんな好き勝手に手を伸ばす。

「王子様、同室の篠ノ井には気を付けたほうがいいよ」

王子様は可愛い顔なのに眉をひきつらせた。

「知ってるよ!そんなこと言われなくても!」

と、これまた近くの椅子を引き寄せて座った。
王子様の同室者は手が早いって噂ですからねえ…。

「あー、もう!持田が篠ノ井の名前なんか言うからなんかむかつく!」

ツン!と鼻を上に向ける姿は可愛いけど、ちょっと頬が赤いような。あれあれ?

ちょうど目の端に、入口から頭を覗かす人影が見えたので、手招きして上げた。
キョトン、としていたが、とてとてとテーブルに近付いてきた。

「おっや?夕ちゃんが一人で出歩くなんて珍しいじゃん」

小路がちゃかすが本当だ。
とりあえずお菓子を差し出すと、嬉しそうにパクリと食べた。
僕の手からそのまま…。
ど、どんな躾をしているんだ!向田!
不覚にもドキドキとしてしまった胸を必死に撫でおろし、近くの椅子を矢ノ口夕(やのくち ゆう)にすすめた。

僕のお菓子は餌なのだ。
いいネタを仕入れる餌なのだ。

ふっふっふふ…。

以前は『ご自由にどうぞ』なんて受付よろしく看板を立てていたけど、もうすっかりみんな慣れてくれて、自由に漁りだしてくれた。

こうして、座っているだけで、いいネタが向こうから飛び込んでくるのですよ…。
そう、こうやってハーレム状態を作り出すことも可能なのだ!
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