*学園*
□片想い宣言
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(先輩:木村 視点)
「今夜、消灯の後、中庭で…」
なんて、定番になってる誘い文句を後輩に伝えた。
それだけで意味がわかってもらえるくらい。
だから、この場で断わられても全然かまわなかった。
「わかりました。じゃあ、またあとで…」
そう言って、俺の部屋から出て行く後輩の後ろ姿に、淡い期待を抱いてしまう自分に苦笑する。
わかってる。
わかってる…。
今夜、俺は振られてくる。
「木村先輩」
外灯がぽつんと一つ灯るだけの中庭で、ぼーっと星空を眺めていたら、ようやく待ち人が現れた。
「すいません。遅くなってしまって…」
背の高さは俺と同じくらい。
細そうに見える体は実はかなりの筋肉質だ。
マッサージ…と称して(いや、本当にマッサージなんだけど)触りまくったからよく知ってる。
スポーツ推薦でこの学園に入ってくる奴は多い。この後輩もその一人だ。俺もそう。
爽やかさを絵に描いたような奴、とかって称されるこの後輩は、一緒にグランドを走り回る日々の中で……俺の心を捕えてしまった。
だけど…。
「あの子がなかなか寝なかったのかい?」
気まずそうに、向田は頷いた。
「なかなか勘がいい子だね」
「いや、そういうわけじゃ…」
灯りの下まで近付いてきた向田の顔がはっきりと見えてきた。
いつもにこにこ笑っている顔が、今夜は…こういうの、何て言うんだろう?沈痛な面持ち?…俺のせいであることは確かだ。
「こんなところに呼び出した理由はわかっているだろう?」
向田はじっと俺を見詰めてる。
「いつまでもうだうだやってるのも何だなあって思ってさ。いっそ潔く振られることにしたんだ」
結論から言ってしまった。
「先輩…」
「だって、嫌だろう?こいつ、俺に気があるのかな?なんて警戒し続けるのって。ちゃんと、振られたらさ、俺、すっぱりあきらめるから」
この期に及んで、まだうだうだと本題を切り出せない自分。
覚悟決めてきたんだろう?!
スーハーと数回息を吸い込んだ。
「好きだ。向田」
俯きかけていた向田が、ぱっと顔を上げた。