*学園*
□ツンの憂鬱
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(副会長:里見十以 視点)
図書室まで校内放送が響くのはどうかと思う。静かに勉強をしたり読書をする場所ではないのかと…。
『ピーンポーンパーンポーン!えーこの放送は生徒会書記持田くんがお送りしておりまっす!てか、ふくかいちょーーーーー!!へるぷーー!!会長が暴れ…あ、何すんですか!うわ、やめ……』
ガタンゴトンドガ!!
プツン……
はあ…っと、心の底から溜息をついて、読みかけの本を閉じた。
受付カウンターで貸出を頼むことにする。
「あ、副会長。さっきの放送…」
「聞こえてた。これから行く」
きらきらした期待に溢れる眼差しではなくて、同情の眼差しが欲しい。
生徒会執行室に近付くと、廊下まで響く怒鳴り声にうんざりしてきた。
ドアノブに手をかけるのも躊躇われる。
「うるせーー!離せええ!!仕事がなんだ!!書類何か見たくもねえ!!離せええ!!俺様を自由にしろおお!!」
一呼吸置いてドアを押した。
「うるさい。黙れ会長」
ピタリとやかましい声が止んだ。
「十以!酷いんだよーこいつら…」
代りに甘ったれた声をかけられる。
「黙れ。そこ、椅子直しとけ。カーテン破れてるの外しておけ。プリントはちゃんとバインダーに戻しておけ」
バタバタと生徒会の面々が動き出す。
その中の一人に、肩を押さえ付けられてどさりと窓際の会長専用椅子に腰を降ろした、どうしょうもない会長に睨みをきかす。
「で。この惨状の説明をしてもらいましょうか?会長」
「ん…」
立派な黒檀のデスクに顎をのせ、暁はぶすっとした顔で言った。
「こいつらが…今日は仕事が終わるまで…帰っちゃいけませんって言うんだ…」
床に散乱しているプリントを拾い上げながら、また溜息をついてしまった。
「…何か用事でもあるんですか?会長様は?」
「ある!!」
ガッダン!と座っていた椅子を後ろにひっくり返しながら暁が立ち上がった。
「何?」
「…秘密だ」
言い逃れは結構。
「で、やっちゃわなきゃいけないのって、何?」
「あー、これなんすけど…」
各委員会と部活からの予算申請書の会長印の場所が空白だった。
バン!と会長デスクに書類を叩き付けた。
「座れ。よおくこの書類に目を通せ。ハンコ」
ついっと会長印が差し出される。
「ここに判を押すことくらいできるな?」
「…なあ、十以。これ終わったら、少し俺に付き合ってくれる?」
付き合うも何も、同室なのだから、部屋に帰ったら嫌でも顔を合わすというのに。
「わかった。働け」
暁の顔がぱあ!っと輝いた。
「よっしゃあ!!うりゃあ!どんどん紙っ切れ寄こせ!全力でハンコ付いてやる!ん?何々?華道部?そんなのうちにあったのか?!お、こっちは王子様親衛隊…ふざけんな…」
ようやく稼働しだした会長に、生徒会一同、はあ、と溜息の嵐だ。
「さすが、副会長ですねえ」
「僕なんか、取り押さえる時に肘が顔面に入りましたよ!」
「……バカと俺様は使いようだ…」
その、バカ俺様会長のニヤっとした視線が少し、気になった。