*学園*

□小動物のあくび
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(おかん:向田睦太 視点)


部活が終わり、そのままぞろぞろと連れだって寮に戻ってきた。

寮の玄関で、ぴょん!と俺の正面に夕が飛びついてきた。

「おかえりなさい!むーちゃん!」

「どしたの?夕」

夕を胸に抱きとめたまま、部の連中に軽く手を振った。
少し先に歩いていた木村先輩が、ちらりと振り返った。
目が合ったけど、先輩は、軽く目を細めて、また談笑の中に戻って行った。
少し、ほっとする。

「あのね、むーちゃん。さっきむーちゃん宛てに家から荷物が届いたよ。でね!僕がサインをして受け取っておいたから!」

「えらいなー、夕は。ありがとね」

胸に抱き付いたままの夕の頭を撫でてやった。
えへへ、って笑う夕が可愛くって、つられて、へへっと笑ってしまう。

「あ!夕!ほっぺにお菓子のカスが付いてる」

「あ、談話室で貰ったの」

「夕飯前はお菓子食べちゃダメだって言っただろう?ちゃんとお礼は言った?…ん?すねないの!」

ぷうっと膨らんだ頬をぷにっと押してやった。

「荷物、部屋まで運んだんだよ」

えらいえらい、と撫でてやり、片手に学校のカバンと部活の着替え、片手に夕をぶら下げて、4階まで登るのが、今日の最終トレーニングだ。




「お菓子入ってる?」

段ボール箱を開ける俺の背中に乗っかって、夕が覗き込んでる。

「んー、お菓子よりもいいものが入ってるはずなんだけどなあ」

家に送ってくれるように頼んでいた衣類や本を取り出して行く。その下の少し大きめの紙袋を引っ張り出した。

「ほら、これ、夕の家からのやつ。一緒に送ってきたよ」

夕は紙袋を受け取って、ごそごそと中身を確かめ始めた。

その隙に…。

段ボール箱の一番底に入っていた、B6判の薄っぺらいアルバムを取り出し、ベッドのマットレスの隙間に挟んだ。

「パンツとか靴下ばっかりでいいものなんか入ってなかったよ?」

「あら残念」

ちょっと唇を尖らせながら、夕が俺の肩にことん、と寄りかかった。
ふわあああ…っと大あくびをする。

「眠くなっちゃったの?」

こくん、と夕が頷いた。

「だから、眠いの我慢して本を読むなって言っただろう?今日は早く寝ような」

「…むーちゃんが帰ってくるの、待ってたから寝るの遅くなったんだもん…」

え…。
意外にもしっかりした目つきで、夕が俺を見上げていた。
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