*学園*

□秘密のお姫様
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(書記:持田 視点)


生まれて初めてラブレターを貰った。
と、思いながら、ドキドキしながら封筒を開いた。

『大事なお話があります。105号室までおいでいただけますでしょうか?』

偉い見事な達筆だ。
100番台の部屋番つうことは、やっぱり1年生か。
僕のこと「先輩」って呼んでたしねえ。
え。どうしよう。
いきなりお部屋に呼び出すなんて、積極的。
でも、まあ、んー。
どちらかと言うと、当事者になるよりも傍観者が好きなんだけどなあ。
でも仕方がないか。
僕のことを好きになってしまったのなら、少しは構ってあげないと。
どんな子だったっけ…。
あれ。
全然印象に残ってない…。
この、学園の記録係の僕だと言うのに…。



コンコンッと105号室をノックした。
ドアが開いて、中から現れたのは…可愛い下級生ちゃんではなく、にょっきり大きな塗り壁だった。

「どうぞ」

塗り壁に促されて、部屋の中に入った。
塗り壁は、廊下をキョロキョロ見回すと、バタンとドアを閉めた。
まるでこれから秘密会議でも始まるようだ。

部屋の中には、さっき僕に手紙を渡してくれた子が、部屋の真ん中のテーブルに向かって座っていた。
ああ、そういえば、こんな子だって、姿を見てようやく思い出した。
それくらい、なんていうか地味。
普段、麗しい連中ばかり見慣れて(目が勝手に…)いるから、なんていうか、地味過ぎて、記憶からスルーされそうな子だ。

「どうぞ」

塗り壁が湯気の立つお茶を僕の前に置いてくれた。
地味子ちゃんの前にも御湯呑みを置いて上げてる。

「持田先輩、わざわざお呼び立てしてしまって、申し訳ありません」

なんともご丁寧に、地味子ちゃんは頭を下げた。
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