*学園*
□平穏な日々
1ページ/2ページ
(男前一般人?!:奈良 視点)
クラスでも地味で目立たない洛山なら俺の愚痴も黙って聞いてくれるので、たまに捕まえてる。
「だいたいさあ、いい男がだよ?きゃあきゃあ言ってるの、うざくねえ?」
この頃、もっと根暗だったのに、少し陽気になり始めちゃった洛山は、うんうん頷いてばかりでなく、たまに意見するようになってきたが。
「気にしなきゃいいんじゃないですか?」
「気にするなって方が無理だろー!」
今日も朝会から壇上に上がった生徒会へのきゃあきゃあから始まり、廊下を通りすぎる王子様の少し離れた後ろを尾行するような団体とぶつかり、やれ、誰と誰がくっついただの、手に手を取り合って、広いが狭い寮の中を何の場所探しだかわからないが、まあ、そんな先輩たちに俺の隠れ場を奪われ…。
今も夕食後の談話室では、目の毒になりそうな先輩方のカップルがちらほらと…。
「俺はさあ!もっと静かな学園生活を期待していたのに」
「みんなお年頃ですからねえ。奈良くんも、気になるって言うことはお年頃なんじゃないですか?」
「ち、ちがーう!そんな意味で言ってるんじゃねえ!」
俺が言いたいのはだ。
男相手に男がだぞ!だらしがないということなのだ!
うーうー言っていると、洛山と同室の鹿淵がのっそりと近付いて来た。
「洛山さん、持田先輩がやってきましたよ」
そう告げられると洛山は、頭を押え、眼鏡をくいっと掛け直し、
「あとはこの鹿淵がお相手します」
と言い残して席を立ってしまった。
俺の正面の椅子に、畏まった顔をした鹿淵が座った。
「どうぞ」
どうぞと言われてもだなあ!
「だいたい、あんたと洛山の関係ってなんだ?お前、洛山にすっげえ敬語使うよな?」
なぜか、鹿淵が、ぽっと赤くなった。
「ま、まさか、お前もこの学園に毒されている一人か?!洛山と出来てるとか?!」
「め、滅相もない!」
大きな体の大きな手をぶんぶんと振った。
「ただ、古くから家同士の交流がありまして…」
「ふうん…」
それならそれで、プライベートなことにはあまり突っ込まないようにしよう。
その時、ざわっと室内の空気がざわめいたのは、生徒会長さんと副会長さんが部屋に入ってきたからだ。
イケメン同士、付き合ってるって噂は本当らしいが。
「会長からしてあれだもんなあ。外に出ればきっとすっげえモテると思うんだけどなあ」
目の前の鹿淵の顔が青ざめた。ん?
「会長がなんだって?」
思わずガタン!と椅子から半分落ちかけた。
その会長殿が真後ろに立っていた。
「モテないひがみか?一年」
う、と言葉に詰まってしまう。
「やめなよ、暁。ごめんね、こいつ今、虫の居所が悪いらしくって」
会長の後ろから副会長さんも顔をのぞかせた。
「だってえ!十以があ」
「やめろ」
副会長さんを振り返って、抱きつこうとしたのか、擦り寄った会長さんの体を副会長さんが、ぐいっと押した。
「や、やっぱり二人は出来てるんですか?!」
立ち上がったついでに後退りしながら思わず言ってしまった。
「だったら何なんだ、一年」
会長がとたんに凄味をきかす。
「ふ、不純だと思います!」
何なんだ、この空気は。
周り中が俺と会長のやり取りに注目している。
はあ、と溜息を付いたのは副会長さん。
「だね。俺もそう思うよ」
そう言って、俺達にくるりと背中を向けた。
「あ、十以!十以!こ、この一年坊主!十以がああなったら、また崩せなくなる…っていうか、ああ、もう!」
すぐにでも副会長さんを追いかけて行きそうだったのに、会長は一瞬何かを考え、俺の方に、ずいっと寄ってきた。
「なあ、賭けをしようぜ、一年」
俺に向けられるオーラが怖い。
「お前、この一年のうちにここで恋人を作ってみろよ」
「は、はい?」
にやりと会長は笑う。
「不純かどうか、そのときわかんだろうよ」