*学園*
□しあわせを抱いて窒息死
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(誰かの弟:杉崎融 視点)
しあわせを抱いて窒息死
たたたたたたっ…
廊下を駆け抜け、目の前に現れたドアに飛び込んだ。
そこには、(さあ、隠れて下さい!)と言わんばかりにカーテンが引かれて隠された一角があった。
ここしかない!!
僕は急いでそのカーテンをシャーー!と開けた。
「…あん?!」
カーテンの中のベッドの上には、金髪で、目がつり上がってる…でかっくて、なんか怖そうな人がごろりと転がって雑誌を読んでいた。
だ、だけど!
ほら!足音が近付いて来たよ!
僕を追ってくるモンスターより、この人の方が人間ぽいからましなんだ!
「た、助けて下さい!」
一応、ベッドの布団の中に潜り込む前に、礼儀として、状況を説明してみた。
「待て!おめえ、何?!うお!入ってくんな!」
掛け布団を頭からすっぽり被って、体を丸くしていたら、上の方から、ちらりと布団の中を覗かれた。
懸命に口に人差し指を立て、しー!しー!ってさらなる状況説明をする。
「と・お・るちゃーーんん!」
きたーー!!
震える体を押えこみ、突っ伏していたら、布団の外の世界から声がする。
「融ちゃーん!どこですかー?うふふ。待てえって、追いかけてほしいのかなあ。うふ。その割には、保健室にいざなうなんて、だ・い・た・ん・なんだからあ!どこかなあ?」
「るっせーぞ!!人の昼寝の邪魔する気か、てめーは!」
怖い人が怒鳴ってる。
すがる思いで、布団の中にある足にしがみ付いた。
「うひゃ。くすぐってえ…。って、ごほ!…俺になんか用でもあんのか?ああ?!」
「ひーーー!あ、あなた様は!い、いえ。決してあなた様のお昼寝の邪魔なんて滅相もございません!…あ、あの、こちらに、こーれくらいの背で、めっちゃんこ可愛い顔をした一年生が幸せいっぱいの顔をして飛び込んできませんでしたでしょうか?」
「知るか。失せろ」
「は、はい!失礼いたしましたーー!」
どたどたとした足音が遠ざかって行く。
ほっ!
ドアの閉まる音まで聞いてから、おずおずと布団の外に頭を出した。
「お前も失せろ」
眉に力が寄ったきっつい目で睨まれて、怖くなって、また布団の中に戻った。
「お、おい!出て行けと言ってんだよ!」
「だって…、外怖いもん…」
ついでに、あなたが怖いもん…。
「っち。…状況だけ聞いてやる」
僕は布団を被ったまま、ずりずりと、その人の顔が見える位置まで這うように移動した。
「あのね!あいつ、変だ」
僕はドアの方を指差して、詳しい説明をした。
金髪の人は、目眩でもしたかのように、手を額に当て、頭を振った。
「もういい。俺は眠い。頼むから出て行け」
その時、また保健室のドアがガラリと開く音がした。
ベッドの上の僕達2人は同時にそちらに顔を向け、同時に顔を見合わせた。
「やっぱ、布団の膨らみがおかしいと思ったんだもんね!融ちゃん、見っけ!」
さあっと、顔から血の気が引くかと思った瞬間、布団の中から引き摺り出された。
そして、え、え!
手首を頭の上でベッドの上に張り付けるように押さえ付けられてさ!
突然覆いかぶさって来た影が…。
僕の顔の寸前でニヤリと笑ったかと思うと…。
唇が塞がれて息が出来なくなった。