*学園*
□シロツメクサの君
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(会計:溝内 視点)
五月晴れの爽やかな昼休み。
僕の自慢のサラサラの髪が風になびいて、替えたばかりのシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。
この匂い、正解だったな…、と髪を掻き上げるポーズをとるが…誰も見ちゃいない…。
おかしいよね。
こんな色男がさ。
恋人もいないで一人で菓子パン持って裏山の日当たりのいい場所探してるなんてさ。
毎日こんな寂しいことしているわけじゃないよ。
いちお、今日はお仕事なわけでありまして。
裏山のクローバー生い茂るその丘に咲くシロツメクサ。
その咲き具合を見に来たわけ。
来る、皐月祭の王冠は、ここのシロツメクサで作られる。
皐月祭の準備で我が生徒会も大忙しってわけだ。
あ…。
こんな場所に先客がいた。
心臓がドキンと高鳴った。
あの子は…。
いつぞや、生徒会室から見かけたあの子だ!
シロツメクサの咲き誇るその中に、一人ぼんやりと空を見上げてるその姿は、忘れもしない!あの子だ!
探してたんだ、君を!
君は、僕にふさわしい!!
その子が僕の視線に気が付いた。
そして、すくっと立ち上がった。
「あ!待って!君、一年?あ、あの、名前は?!」
僕の声が聞こえているはずなのに、こちらを見ようともしてくれない。
「あ!僕は三年の溝内。生徒会の会計をやってるから、僕の顔見たことがあるよね?!」
歩きかけたその子が振り向いた。
僕の顔を見て、ツンとそっぽを向いて、また歩き出した。
う、う、うわお!
ツンだ!
ツンなんだね、君は!
心が震える…。
恋に落ちるとは、こういうことなのだろうか…。なんて…。
胸を押えていたら、意外なスピードでその子がダッシュした。
え、あ、ちょっと!!
「あー!せめて名前を!!」
慌てて小さくなるその姿を追いかけた。