真田兄弟主従SS

□つかのまの。
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珍しく息を切らせて駆けてきた佐助を、信幸は胸に受け止めた。

「どうした?」

「はぁ、はぁ、ふぅ…、い、いあ、遅れたから、走って…」

佐助は懸命に息を整えている。
信幸は、そんな佐助の体をそっと抱きしめた。



国境のお地蔵様の前。
そこが二人の秘密の場所。


「まいったよ。旦那に弁当作ってるところ、見られちゃってさ」

前髪を掻き上げる佐助を信幸は眩しそうに見つめる。

「元気か?源次郎は」

「まあ…あいかわらず…、って、教えないよ。旦那のことは。約束じゃん」

敵味方に分かれた今、お互いに家のことは言わない聞かない。

それが約束。

神妙な顔をする佐助に、信幸はくすりと笑った。

「で、弁当は奪われたのか?」

「いや。も一個作った」

手に提げた包みを掲げて見せた。

「あそこの木陰で食べよう!」

佐助は信幸の手を引く。

「待て。その前に…」

信幸は馬に括り付けてあった包みを外すと、お地蔵様の前に、とん、と置いた。

「またお供えしちゃうの?」

「大丈夫だ。必ず無くなっているから」

まかりなりにも城主の弁当だ。
近くの子供たちが喜んでいるらしい。
直接上げてあげればいいのにと佐助は言ったが、それだと、ここに来てることがばれるだろう?と言われ、納得した。

信幸は佐助の弁当がいいという。
だから、主の目を盗んで忍ばせてくる。


木陰で、肩にもたれて寝息を立て始めた佐助の、伸びた髪が頬をくすぐる。

働かせすぎだ、まったく…。

逢瀬の度に安心した寝顔を見せられては、苦笑いするしかない。

御馳走様、佐助。

空になった包みを、風に飛ばされぬように、そっと佐助の懐に戻し、信幸はその肩を抱いた。

連れて帰りたい、なんて言えないから…。



〜おしまい〜


佐里ゆーね様からのリク「信幸x佐助の甘甘」。すいません…。ベタベタさせると、信幸がむっつり^^;になりそうで、こんなんあっさり系にしてしまいました…。
そうか!二人はロミオとジュリエットかもしれないぞ?!なんて思い始めた今日この頃…。


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