真田兄弟主従SS
□夢見た頃に…
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≪夢見た頃に…≫
その大きな目が笑うよ。
俺を見て笑うよ。
あんたそっくりな顔してさ。
俺に笑いかけるんだ。
泣いていいですか?
笑っていいですか?
手を伸ばしていいですか…。
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あんたはもういない。
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「佐助!佐助!」
まだ甲高い子供の声が俺様を呼ぶ。
足音を立てずに背後から近付けば、慌てて振り返るから、知らずに笑みが浮かぶ。
「佐助って呼ぶなって言ってんだろ?耳悪いのかね?それとも頭が悪いのかな?」
むっと唇を尖らす。
そんな表情にちくりとくる俺は、まだあの日から立ち直れていない。
「父上は佐助と呼んでいた。そうだな?!」
「まあねえ…」
「ならば、なぜ、某が呼んではいけないのだ?!」
触れては欲しくない話題を平気で持ってくるのは、本当に子供だ。
「用件は何さ?」
「さ…、猿飛に聞きたいことがあってな」
あら。お利口さん。
「何?」
黒髪が風に揺れる。
思案気に、顎に手をかける仕草があの人を思い出させる。
早く…早く、この場から立ち去りたい。
「父の所有していた、大坂城の間取り図はどこにある?」
ちょっと小首を傾げる仕草がかわいいね。
はは!
俺様、もう、顔上げらんない。
顔を伏せ、頭を垂れ、畏まる様に応えるのがやっとだ。
「人手に渡っていましょう。九度山へ置いてきたゆえ」
「そうか…。あの懐かしき品は、もう、見ることができぬか…」
幸村の子、大助が寂しげに笑った。
つってもさ!!
ねえ?!
言っていい?!
ある日、九度山のお籠りの旦那からさ、用事頼まれて、ちょっと出かけていたんだよ?
帰ってきたら、
「某の子だ」
って、二つ三つの子を見せられて、わあ、おめでとう、なんて言えるかっての!
お前、誰?
「さす…、猿飛、またすぐ、どこかへ行くのか?」
大助が問う。
当たり前のことを問う。
だから、こいつは馬鹿なんだ。
「全国津々浦々、全ての情報をお届けしましょう。…こんな、平定した時代でも、なあに、楽しい話はありますよ」
あの日から何年…。
旦那を失ってから…、…自分を失ってから何年…。
俺はもういない…
「次の戦場は、某の警護をしろ。戦忍だろ」
大助が、真面目くさった顔で言う。
俺にはね、そんな小手先は通じないの。
何回そんな手に引っかかったか、わからないっつの。
「戦あんの?」
「小競り合いだがな」
にーっと笑う表情が、俺の胸を締め付けた。
「いいよ。その命、落とされちゃ、たまんないわ」
破顏の笑顔に問う。
俺の生きる場所を与える覚悟はあるのかと…。