BASARA 佐幸佐 SS 2
□ひとつに…
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まだ夏には早い薄ら寒い宵の縁、陣幕をくぐり、旦那が外に出てきた。
見張りをしていた梢の上から、そっと声をかける。
「用足しかい?」
旦那には俺の居場所がわからないのだろう。ただ、頭上の星空を仰いだ。
「いや…、熱くて眠れなくてな」
俺なんか、寒くてかなわないのに、ほんとに旦那は額に汗までかいていて、それを手の平で拭ってる。
戦はたぶん明日、いや、もう今日か?起こるだろう。
今はひっそりと静まり返っているこの陣の中では、ぐっすり眠っている奴もいれば、緊張で眠れない奴、何かに拝んでる奴、様々だろう。
「…っと。旦那」
俺は旦那の後ろに降り立った。
「相手してやろうか?」
「は?」
背後から数歩近付き、旦那の手をそっと握った。
「なあ?俺は寒くて旦那は熱い。することは決まってんだろ?」
察した旦那がちょっと慌てた。
「こ、ここでか?」
って、言うってことは、了承の意だね?
「俺様、声、我慢するから、ここでもいいけどさ…」
「ふ、ふざけるな」
じゃあ、って、旦那の手を引いて、少し林の中に踏み入って行った。