●捧げもの●
□白幸姫と通りすがりの忍者
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「こ、これは…!」
えーんえーんと、泣いて俺様に縋り付く小人たちに案内されて、森の奥へと来てみれば…。
「え?え?何これ?死んでんの?え?」
ガラスの棺の中で、手を胸元で組んで横たわるその姿を覗き込んだ。
思わず力が入り、手をかけていたガラスの棺の縁がミシミシ音を立てた。
「えーん!白幸姫様があ!」
「お助け下さいませ!王子様あ!」
これは…!
なんという美しさ!
透き通るような白い肌に尻尾の生えた黒髪。
閉じた瞼を飾る睫毛の長さ。
真っ赤なリンゴの様な唇はぷるるん、ってしてる。
「いや、これ、どうしろってーの?生きてるようにも見えるけど、息してないような…」
純真無垢な顔立ちの、その頬は、今にもぽっと赤く染まりそうな……。
「まあ、これ、くれるって言うなら貰って帰るけど…」
俺様の部屋に飾って…毎朝、いってきますのチュウとか…いやいや、一緒の布団で寝ちゃおう、とかそこまでは考えてないよ?!
「お持ち帰りは禁止です!ていうか、伝説では、ここで王子様が白幸姫にキッスするのです!」
「そうすると白幸姫は蘇るのです!」
えーゾンビ…、とか思うものの、こんなゾンビ…いや、ちょっと可愛く言うならば、こんなキョンシーなら追い駆けまわされても素敵じゃないか。
「てか、俺様…王子様じゃなくて、ただの通りすがりの忍びなんですが…。任務の帰りで…」
小人たちが慌てたように小さな円陣を組んだ。俺様は姫の美しさにうっとりと見とれることにする。
「おいおい…、王子様じゃないってよ」
「っち。俺様とか言うから王子様かと思っちゃったよ」
「いや、それ、全然違うし」
「でも、まあ、よく見りゃなかなかイケメンじゃねえ?」
「あー…でも貧乏そう…」
「それにやらしそう…」
「でも!時間が無いよ!このままじゃ白幸姫様、腐っちゃうよ!」
小人たちは、微妙な顔をしながら俺様と棺の周りを取り囲んだ。
「この際、あんたでいいです。とにかく急いで姫にキッスして下さい!」
すがるような14の瞳に、俺様の頬は熱くなった。
「え…、みんなが見ている前でするの?」
そんな…。
だって、俺様ハジメテだし…。
「目、つぶってますから!やっちゃってください!」
たおやかに眠る姫を覗き込んだ。
ドキドキドキ…。
「あ、あの!目つぶってても、音とか聞こえない?」
いやん!恥ずかしい!
「音って何すか!キッスに音がするんすか!」
「…ちゅっぽん!とか…」
小人の一人が俺様の足の甲を思い切り踏み付けてきた。
「誰がそんなキッスしろって言ったー!ちゅ!ってちゅ!ってやりゃあいいんだよ!」