●捧げもの●

□Forever You
1ページ/4ページ

雲ひとつない青空は澄み渡って、白いハトが幸せを世界中におすそ分けに飛んでいく。

教会の鐘が鳴り響くと……ほら!






『Forever You』







「おい!まだ支度が終わらないのか」

いきなり開けられたドアに、ぼんやりと振り返った。
いけね…。
頭がどこか遠くへ旅してた。

「……。トランクス一丁で式に出るつもりか…」

「あ…右目の旦那…」

夢うつつの様な状態な俺様に、右目の旦那は呆れて肩をすくませた。

「真田のやつはもうすぐ支度が終わるみたいだ。今、政宗様が向こうの様子を見に…」

あ、少し頭が冴えた。

「ま、政宗が旦那の着替え覗きに行ってるだと?!」

こうしちゃいられない!とハンガーに吊るしてあった白いタキシードを引っ掴んだ。
ズボンに片足を突っ込んで転びそうになりながらも必死に着替える。

「…大丈夫なのか…そんなことで…」

右目の旦那が眉を寄せた。




今日は!!

俺様と旦那の結婚式なんです!!!

夢にまで見た…
いや、見ることさえ恐れ多い…

もう、俺様、今すぐ死んでもいい…
いや、死んだら旦那が可哀想だ…
可哀想…
最愛の俺様が居なくなったら旦那が可哀想…
うおっ!
最愛の俺様だって!!
きゃあ!
最愛の…最愛の…旦那ぁぁぁ!!!

「百面相はいいから…そろそろ時間だ…」

この右目の旦那と政宗は、俺たちの介添え人をかって出てくれてる。
おおっぴらに出来るもんじゃない、こんな俺たちの結婚を、こうやって祝ってくれるのはありがたい…が!

「そうだ!旦那の着替え!ちっくしょー!俺様だって旦那の着替えなんか隠れて覗き見たことしかないのに!!政宗ぇぇぇ!旦那の生着替えを拝むとはぁぁ!許せん!」

シャツの裾をズボンに押し込みながら、ジャケットを掴んで廊下に飛び出した。
目指すは旦那の控室!!
だから一緒の部屋で着替えようって言ったのに!
それは恥ずかしいからなんて、もう、旦那ってば…旦那ってば…可愛い!

「…見たことが無い?だと?」

後ろを追いかけてきた右目の旦那がぼそっと呟いた。
目の前の『使用中』になっている旦那の控室のドアを思い切り開けた。

「旦那ああ!」

ドアを開けて立ちすくんでしまった。
部屋の中に…
天使が居たんだ…。

「お、佐助。なかなか似合っているな」

天使が俺様のことなんか褒める。
俺様なんてどうでもいいのに!!
こんな…ラブリーキュートなマイスウィートエンジェルに…俺は…俺様は…釣り合うことができるのでしょうか…?
急に自分が恥ずかしくなった。
もじもじしてたら純白の天使が俺ににっこり笑いかけた。

「某はどうだ?」

少しはにかみながら、ウェディングドレスの裾を揺らしてみせる。
ミニスカのその場所からは、旦那のすらりとした素足が覗く。
旦那の長い髪の毛の尻尾も、今日は純白のリボンで結ばれてる。

「さ、最高に…か、可愛いです…」

「そ、そうか」

旦那が恥ずかしそうに頬を赤らめる。
俺様何か…とっくのとうにゆでダコ状態だ。
ぽっぽぽっぽと顔面から湯気が吹き出しそう。

「しかし…なんで某がドレスなのだ?やはり佐助のほうが色白なのだから似合いそうな…」

旦那がドレスの裾の短さを少し気にしながら直した。
可愛い…可愛い…可愛い…。

「まあ、いい。佐助の希望なのだからな。某は、佐助の希望を叶えると約束したのだから」

はいーー!!
俺様、我儘言っちゃいました!
結婚して下さい!なんて人生最大の我儘に加えて、こんな…こんな…ウェディングドレス姿を旦那に強要するとは…。
旦那の笑顔に急に申し訳なさが沸き起こって来て…。
泣きそうになった。
すっ、と差し出されたハンカチを有り難く受け取った。

「泣くのは構わんが、鼻血は我慢しろ。貸し衣装が汚れる」

右目の旦那が困ったような、だけど生温かい目で俺を見てくれた。

「Are you ready?招待客も揃い始めたぜ」

開けっぱなしだったドアを軽くノックなんかして、政宗が顔を覗かせた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ