*学園*

□俺様と一緒
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   *


「あー……」

朝から会長の挨拶をさせられるらしい。
講堂にはすでに全校生徒お揃いだ。
ステージの裏手で、生徒会役員一同、出番を待っている。

副会長…十以はてきぱきと他の奴らに指示を与えてる。

「会長の挨拶が済んだら、順番に役職、学年クラス名前、簡単な一言を…」

「っていうかよ?会長やばいだろ?」

ネクタイも締めずに壁に額を押し付けて、あーあー唸ってる俺に、一同の視線が集まった。

「副会長!いつもみたいに一発ぱこーん!と会長の目を覚まさせてやって下さいよ!」

十以が俺に近付く。
ああ…
引っ叩かれるのでもいいから、その手に触れて欲しい…。

「みっともない。早く支度しろ」

それだけ言って、くるりと背を向けられた。

えーー!
それだけーー!?

そんなんじゃまだ浮上できません…。

へなへなと壁に頭を擦り付けながらしゃがみ込む俺を一同は呆れて見降ろしてる。

「あ、あの!代りに僕がぱこーーん!とやって来てもいいですか?!」

「やっちゃえやっちゃえ」

パシン!と頭を引っ叩かれ、(ってスリッパどっから持ってきやがった?!)誰かが無理矢理ネクタイを首に締める。

「ほら!出番です!会長!」

「あー……」

ちらりと見た十以は、ツンとすました横顔だけしか見せてくれなかった。




「生徒会長の杉崎高暁だ」

一呼吸置いて、壇上から立ち並ぶ奴らを見渡す。
期待にワクワクした目で見やがって。
仕方ねえな、ったく。
ザッと前髪を掻き上げた。

「おめえら!俺様の言うことが聞けるか!!?」

声を張り上げると、講堂中からわーーっと歓声が起こった。
いいね、いいねー!

「俺様についてくれば間違いねえ!俺を頼ってこい!わかったな!!」

「きゃーー!杉さまーー!」だの、「かいちょうーー!」だの「抱いてー!」だの、心地いい歓声が俺を包む。

可愛い奴らめ。

「以上!」

講堂を揺るがす歓声の渦に片手を上げて応えた。
俺の一歩後ろで、こほんと咳払いが聞こえた。

「副会長の里見十以です」

俺の時とは違う、黄色い歓声が沸き上がる。
「美しー!」「きれーふくかいちょー!」の声に、うんうんと頷く。
「付き合ってー!」「やらせてー!」の下品な声には睨みを利かせた。

「書記の持田でっす。……」

もうどうでもいいので、ネクタイを緩めたら、十以がちらっと睨んできた。
んだよ…。
というか、お前が見てくれるなら、全部脱いじゃうよ?

「全員終わるまで、気を付けだ、会長」

「……はい」

退屈なので、十以の顔でも見詰めてようか…。





大歓声と盛大な拍手の中、一仕事を終え、ステージ裏に引っ込んだ。

「会長!どこ行くんですか!?」

ヒラヒラ手を振ってあくびをかます。

「寝みぃ…。どっかで寝てくるわ…」

引きとめる声は上がらない。

「会長のあのギャップは、あれはあれで面白いんですけどねえ」

「副会長がバシン!とやらねえと、会長はいつもあんなだしなあ?」

「副会長?!」

叱ってくれる十以はしかとですもの。
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