*学園*
□片想い宣言
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さあ振ってくれ!なんて、潔い心に占められてるわけでもない。
悔し紛れに少しのストレス発散だ。
「俺の方が、先に…、あの子よりも先に出会っていたら、何か変わったかな?」
向田は唇を噛み締めたまま、何も言わない。
「ずるいよなー。幼馴染っていう立場はさあ?後から入って行く隙もありゃしないじゃないか。向田の横に居てさあ、それが当然!みたいな顔をみるとさ、むかつくときがあるんだよね、正直」
少し脚色。そこまでは思っちゃいないけどね。
わざと、向田の怒りをかおうとしたわけで。
「あいつは別に…そんな」
ほおら、向田が食いついていた。
「幼馴染からいつ恋人に昇格したの?いつそんな関係になっちゃったの?今年も当たり前みたいに同じ部屋でさ。毎晩ベッドの中でいちゃついちゃったりしてるわけ?」
「先輩!!」
向田の眉がつり上がった。
「可愛い顔してよくやるなあって思うよ。だけど、向田があの子と、あーんなことやこーーんなことをしてるのかって想像するとさ…いいおかずになるわけで…」
「先輩!いい加減にしてください!!」
怒った怒った。
「たまには俺とも遊んでみない?恋人の目を盗んでこっそり…ってのもスリリングかもしれないよ」
「お断りします!」
覚悟していた言葉に少し息を止めた。
「……そっか」
「話がそれだけなら、俺、戻ります。じゃあ」
向田がくるりと背を向けた。
「あ…」
俺がまだ何か言うとわかったのかな。向田が足を止めた。
ほんとは、「ごめん」って付け加えたかったけど、それも少ししゃくだ。
「すっぱりあきらめるから!」
ごめん。あきらめるから。
向田はしばらく黙ったままだった。
感情に任せて心の内を口にするような奴じゃない。
「…さっきの、先輩が本心から全部言ってるんじゃないってわかってます。俺のことをそんな風に思っていてくれて、すごく…うれしかったです。だけど、俺、好きな人がいるんで、申し訳ないんですけど…気持ちはありがたかったです。だから…」
向田の背中をじっと見つめていた。
「だから、明日から、またいつもの木村先輩に戻って下さい」
これにて終了。
なんかすっきりした。
「わかった。……おやすみ、向田」
「おやすみなさい。木村先輩」
明日も何にもなかったように、向田は笑いかけてくれるだろう。
その横には、何にも知らない可愛い笑顔があるんだろう。
少しほってっていた頬を両掌でパシパシっっと叩いた。
もう二度と口にも顔にも出さないからさ。
お前が笑ってるだけで、いいや、俺。
(おしまい)
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