*BL Original novel・2*

□しゃぼん玉ゴシップ
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家の掃除や洗濯を済ませ、一息をついていたところで、何気なく窓から外を見て思い出した。窓から少しだけ見えるあそこの家を訪れないといけないんだっけ。ご丁寧に、『ゴミ出しルールマニュアル』の冊子が郵便受けに入れられていた。こういうことはちゃんとしておかないと、優しい顔をして御近所さんは実は厳しい。
ついでに夕飯の買い物を早めに済ませるか、とツッカケで表に出る。ブロックごとに整然と並ぶ家々の、数軒先を目指した。
高いコンクリートの塀に囲まれた立派なお宅は外からでは覗えない。門扉にはセキュリティ会社のステッカーが貼られ、防犯カメラはこちらを睨んでいる。しかし、チャイムを押すものの返事がない。
社長というくらいなんだから、昼間居なくても当り前だ、と、踵を返そうとして、手にしていた冊子を思い出した。郵便受けに押し込もうとしたが、中には郵便物がどっさりと溜め込まれていた。ふいに、朝の会話を思い出し、家の中の様子が気になった。
まさか、家の中で社長とかいう人が倒れていたりはしないだろうか?一人暮らしだというし、お年寄りかもしれない。そっと門扉を押すと、そこには鍵はかけられていなかった。そのまま敷地内に入り、敷石を数個踏み、玄関先までやって来た。

「すいませーん!」

ドアを拳で叩いてみる。返事がないか、ドアに耳を当ててみる。中から、微かに物音が聞こえた気がした。思わずドアノブを回してみると、鍵が掛かっていなかった。
これは?!中で人が倒れている可能性もあるけれど、泥棒の可能性もある!僕は思い切って玄関のドアを開け、家の中に足を踏み入れた。
三畳ほどの広い玄関の床は大理石のタイル貼りになっていた。そして、新築の匂いが爽やかに…、とは言い難い光景に唖然として立ち竦んだ。脱ぎ散らかされた革靴が玄関には散乱し、玄関から一段高くなっている玄関ホールには、壁に絵は飾られているが曲がっている。うず高く積まれたままの段ボール、さらにその上に脱ぎ散らかしたワイシャツやネクタイなどが引っかかっている。これは一体…?

「すいませーん!どなたか居らっしゃいますかー?」

声を張り上げると、微かに「…う…」という呻き声の様な声が聞こえた。これはヤバイ!

「お邪魔します!」

慌ててツッカケを脱ぎ捨て、家に上がり込んだ。キョロキョロと家の中を見渡し、半開きのガラスの扉を開けた。
そこは広々としたリビングルームだった。昼間だというのにカーテンが引かれ、薄暗い。そして、ここも…、いや、ここは玄関よりも酷い有様だった。缶ビールの空き缶がそこかしこに転がり、コンビニの袋や弁当のプラスチック容器なんかがその隙間を埋めている。
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