*BL Original novel・2*
□baby→baby
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応接室のソファーで仰向けになって台本に目を通していると、ゆっくりと音を立てずにドアが開いた。また小さな音だけ立ててドアが閉まる。
「あ、起きてたんですか?」
相変わらず赤ん坊を抱いたままのマリが部屋に入ってきた。
「…まだそれ連れてんのか」
マリが、俺の頭の横に腰を降ろした。
「あっち、電話とかでうるさいから」
「…ふん」
台本を床に落として、頭の上のマリを窺う。
「お前さ…」
口に出す前に一瞬考えるが、思ったことは全部口に出すほうがすっきりする。
「…子供とか欲しいわけ?」
「はあ?産めませんよ、僕は」
こっちは真面目に聞いてるのによ…。
ごろりと横向きに寝返った。
「俺としては、まあ、いろいろとお前に対して責任感じてんだよ。お前だって普通に女と付き合って結婚してとか…」
「何言ってるんですか」
マリが俺の頭の上に、手の平を乗せた。
優しく擦ってる…って撫で撫でかっ!
「こんなに大きな子供がいるから、もう十分ですよ」
くすっと笑うマリを睨みつけるが…そんなもんじゃマリが動じないのはわかってる。
強くなったもんだ、こいつも。
「………。そーゆーことなら、遠慮なく……一生束縛すんぞ」
ちょっと驚いた顔なんかしやがるから、……正直少し……照れた。
腕を組んで、目を閉じて、丸くなって…寝てやる!
まだ俺の頭を撫でながら、
「ずっとついて行きますよ」
と心地のいい声が言った。
*
「マリちゃん、遅くなってごめんねー」
高岡先生の奥さん、瑞枝さんが応接室に入ってきた。同じ事務所の役者さんだ。
「あら?みやもっちゃん!?」
よく眠っている赤ちゃんを僕からそっと受け取りながら(腕が痺れたー!)、僕の膝を枕に、寝息を立てている宮元さんを見て、驚いた声を上げた。
「疲れちゃってるみたいで」
瑞枝さんは宮元さんの寝顔を覗き込み、
「でっかい子供みたい」
と笑った。
しーっと、僕は慌てて人差し指を立てた。
「起こすと大泣きするかもしれないので静かに」
「うわー!やだやだ。こんな怪獣の大泣き聞きたくないわ!」
つられて僕も笑ってしまい、揺れた膝の上で、宮元さんが、「ん…」と微かな息を漏らした。
寝顔は可愛いんだよ。
この、大きな赤ちゃんは。
(おしまい)
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