*BL Original novel・2*

□ビブラート
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裸足で泣きながら駈け出すという失態。
泣いてないけど…、泣いてないけど手の甲で頬を拭った。
呼吸を落ちつける為に横断歩道の信号機の柱に寄りかかっているところを……見つかってしまった。
慌てて走り出そうとする腕を掴まれた。

「はぁはぁはぁ…。何やってんだよ…」

僕を追って来たらしい住吉は、僕よりも荒い息だ。

「ど、どうでもいいだろ!離せよ!」

腕を振りほどこうともがくが、意外に強い力で離れない。

「離せって、あんた今、赤信号渡ろうとしてなかったか?!」

別にこいつは、信号無視を止めようと追いかけてきたわけじゃないだろうに!
……じゃあ、何で追いかけてきた?

「もう青だ!離せ!」

きっと、あの、いい子顔したあいつに言われて追いかけてきたんだ。
僕の為何かじゃない。
あいつの為に。
僕が大嫌いなあいつのために!

「って、どこ行く気?」

離された腕で自由になった体で横断歩道を渡りだした。住吉はまだついてくる。

「帰るんだよ!」

こんなむしゃくしゃした気分で稽古何かやってられるか!愛想笑いなんてできるか!

「あ、家この辺?俺んとこと近いかも」

二駅分歩くつもりだとかはわざわざ言うつもりもないが、なんだってこいつはついてくる!
夜道の薄暗さの中で、看板の光に映る住吉の顔をちらりと見た。
殴られた頬がまだ赤い。
それだって、それだって…僕の為じゃない!
いい気味だ!

「なあ?みんな心配してるかもだしさ。戻らねえ?あ、ほら。一緒に謝ってやるし」

何で僕が謝る!

「うるさいな!僕のことなんかほっとけばいいだろ?!早くお前も、いとしのマリちゃんの元に戻ればいいだろ!カッコつけやがって!」

怒鳴り返されるかと思ったら、ふぅ、と深い溜息で返された。
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