*BL Original novel・2*
□ビブラート
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「マリさんには宮元さんが付いてるしね。今はお前のがほっとけないだろ?」
いちいち言うこと全部が気に障る。
立ち止まり、住吉を正面から見据えた。身長差が無ければ、胸倉を掴んでやりたいところだ。くそっ。
「何かい?!マリさんに振られたから寂しくって僕に構ってもらいたいって言うの?!ふざけんなよ!」
住吉が頬をひくつかせてる。はっ!
「生憎と、僕には返品されたおこぼれにあずかるような趣味は無いから。…早く戻って、マリさんにほっぺでも舐めてもらいな!」
住吉の目付きが変わった。
鋭い目で僕を睨みつける。
「マリさんが一体お前に何したんだよ。いい加減にしろよ」
「そういうの全部が気に入らないんだよ!!」
叫びに近い声を上げた。
何もしないでも周りから可愛がられ?
事務所の有力者の恋人にちゃっかりおさまって?
実力もないくせに、何もしてません、みたいな顔で仕事を取っていく。
やってることは前の僕と同じくせに。
同じくせに、澄ましているのが気に入らない。
「あ、ねえ。いいこと思い付いたんだけど」
急に声色が変わった僕に、住吉は怪訝そうな顔を返す。
「あんた、木月落とせよ。僕、宮元さん落とすから」
「はああ?!」
目を見開いてる住吉に肩をすくめてみせた。
「僕に宮元さんを落とすのは…んー、…無理かもだけどさあ。住吉くんに協力することくらいは、僕にも出来るかもしれないよ?」
住吉が僕から目を逸らし、唇を舐めた。