*BL Original novel・2*
□照れ屋の被写体
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あまり顔出しは好きじゃない。
理由は簡単、恥ずかしいからだ。
芝居なら、自分であって自分じゃないからいいんだよ、きっと。
って。
何をブツクサ言っているかというと…。
鏡に映った制服姿の自分に溜息をついた。
今日用意された衣装だ。
今日の仕事は、CDドラマのジャケットに使う写真撮影だ。
それで…その…なんていうのか…演じてるキャラが着ているのと同じ、高校生の制服を着せられて…だ。
滅茶苦茶恥ずかしい!!
僕の他の出演者も、同じように制服を着せられたり、なんかのスポーツのユニホームみたいの着せられたり、何て言うんだっけ、これ。
そう!コスプレ大会みたいになってきた。
「うちの木月がいつもお世話になってます…」
なんて、控室の外から声が聞こえてきた。
わあ!よかった!マネージャーさん来てくれたんだ!心細かったよ!
………。
なんて思えるはずがない!!
なんでそんなマネージャーみたいな台詞を聞きなれた声が言ってるんだ!!
ドアがガチャリと開いて、入ってきたのはもちろんマネージャーさんじゃなくて…。
「よお」
こちらも、滅多に見ることができないスーツ姿の宮元さんが部屋に入ってきた。
って、あなたもコスプレだっけ?!
部屋の中にいた撮影のスタッフさんも驚いている。
「どうも。キーボイスのマネージャーをやっています、宮元と申します」
頭を下げる宮元さんに、僕は慌てて駆け寄った。
「何してるんですか!マネージャーって、本当のマネージャーさんはどうしたんですか?」
宮元さんは、
「別に…神崎のやつを拉致監禁して入れ替わった訳じゃねえよ。たまたま、あいつが忙しくて俺が暇だったという…」
とか、ぶつくさ言い訳してくる。
って!
神崎さーーん!!
大丈夫か?!
「いやあ、うちもなかなか人手不足で。暇そうな俺まで営業に回されてるんですよ」
なんて、笑顔をスタッフさんに振りまいてる。
なんだそれ?!
「あら。次回作は是非宮元さんも出演して下さいよ」
何て言葉に、
「是非」
なんて、さらに笑顔を重ねてる。
どうなってるんだ?!
「そろそろ行きましょうか?」
と、僕と、部屋の中に居た共演者の人達が控室から外へと促された。
「おい、マリ」
とか、僕を引き止め、僕のネクタイを直してくれるマネージャーさん(?)も一緒に付いてくる。
「ありがとうございま…」
言いかけて、ニヤついた宮元さんの顔を見たら、ぼわっと顔が熱くなった。ただでさえ恥ずかしいんだから、やめてくれ!
「木月ちゃんはそのまま表歩いてもふっつうに高校生に思われそうだねえ」
なんて、振り向いたスタッフさんが言った。
「……俺は犯罪者になっちゃうな」
すでにマネージャーさんを手にかけて、犯罪者の一員になっている宮元さんが耳元で囁いた。