*BL Original novel・2*

□気になる人ができました
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販売店、と書かれていた店にやって来た…が、滅茶苦茶入りづらい…。
アニメの美少女ポスターやらが壁一面に貼られている。
ちらっと店の中を覗き、漫画売り場が入り口付近にあるのを確認。漫画でも買いに来た振りをして入ればいいか…。
店の前でうろうろしている俺を、店に入っていく女子がチラっと見てきた。
う、うわ。
ここでうろうろしてるのも恥ずかしい…。
勇気を持って、その店の中に足を踏み入れた…。


俺は部活馬鹿で、彼女も居なければ、ゲームもあんましないし、テレビもあんま見ない。
だから…、この店の雰囲気には度肝が抜かれたんだ!
なんか可愛い声のカラオケみたいな歌がガンガン流れてて、あちこちに置いてあるモニターはアニメがガンガン映し出されてる。
きょどってあちこち見渡せば、夢の国に居るような…ファンタジーに包まれてる…。
ああ…。
俺、めっちゃ場違いだ…。
ポケットの中に突っ込んでた紙切れに手を伸ばした。手の平に汗をかいていた。

「すいません!これ、探してるんですけど」

こういう場合は、店の人に声をかけてでも、さっさと目当ての品を手にして立ち去るべきだと…。

「あちらのコーナーにあります」

店員が奥の方を指差した。
振り返れば…、さっき入り口で通りすぎた女子や、その他、増殖した女子が待ち構えていた。
しばらく、じーっと様子を窺うけど、いっこうにどく気配が無い。
ええい!
俺は気合を入れて、そのコーナーに足を踏み入れた。
何がここまで俺を強くしてるんだろう?!
不審者を見るような視線を浴びながら、背中が汗でじとってきた。
素早くCDを漁る。
手に取り、裏返し、名前を見つけ、ドッキン!としていることは顔に出ないように努力して、何でもない風な感じで、なけなしの今月の小遣いをレジで払い、何でもない風な足取りで店から出て…。
少し歩いた先で、

「よっしゃああ!!」

ガッツポーズを決めた。





手に入れたCDは…。
俺にテスト勉強を放棄させる威力を持ったお宝だった。
お、俺!この声の持ち主知ってるし!
顔見たことあるし!
メアド知ってるし!!

俺とあの人をぶつけてくれた運命の神様に拝みたくなる。

だけど!
だけどっっ!!

あの人が、どんな顔でこんな声を出してるのか…想像がつかない。

『あ…、だめ……』

鼻血が出た。

『僕を…滅茶苦茶にして……』

やばい。やば過ぎ…。
今夜はもう、布団から出られない…。

この次、木月さんに会ったら、どんな顔をすればいいんだ…。
ああ…、ああ!!
会いたい!!!
うおお!何だこの気持ち!!
会いたい!会いたい!!
うおおおお!!

はあ……。


今はただ…、声だけ聞こえる木月さんが、自分に向かって囁いてくれているように感じながら、俺が恋人になってしまったかのような気分に浸り切りながら…。

うっとり世界に浸っていよう…。

ああ…。
もっと俺に向かって、囁いて…。





(おしまい?)


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