*BL Original novel・2*
□年上の恋人
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「あ、ああ…。そうだけど…」
そんな、俺の顔や名前が売れてるとは思えないが…、と怪訝な顔をした俺に、悠也の弟が一枚のCDを差し出した。
「ん?あ、ああ!これっ!」
「はい!それ!木月さんと一緒に出てますよね!住吉敬太…さん!」
マリさんと一緒に出たドラマCDだ。
懐かしいねえ!
「何でこんなもん?」
目の前の健全健康優良児っぽいこの高校生にはふさわしくない内容のCDだ。
「あ、俺、木月さんと知り合いなんですよ!」
自慢気に言ってくる。
「マリさんと?」
悠也の弟がマリさんと?
ううむ…。繋がりが見えてこない…。
「あれ?木月さんの名前、真理って書いてマサトって読むんですよ」
知ったかぶった表情に、思わず笑ってしまった。
「そうだけどさ。親しい人はマリって呼んでるんだよ。まあ、俺も結構仲がいいからそう呼んでるけどね」
「えーー!!そうだったんですか!失礼しました!!」
「いいって、いいって」
真っ赤な顔で恥ずかしがる姿は悠也に似てるなって思った。
「住吉さんは木月…マリさんと同じ事務所ですもんね!そうですよね」
おや?マリ呼び。
ま、目をキラキラさせてる表情に突っ込みはやめておこう。
「ん?悠也も同じ事務所だけど?」
「えーーーー!!悠兄が?!」
賑やかに大騒ぎしてる悠也の弟の手から、懐かしいCDを取り上げた。
綺麗なイラストで描かれた男同士のカップルが寄り添う。
ふ…と、なんか切なくなる…。
マリさんと…初めて会った時にやったやつだ…。
「あ!悠兄!悠兄って、キーボイスって事務所なのかよ?!ねえ!じゃあこないだマリさんと会ったときに…」
玄関から出てきた悠也に弟が駆け寄った。
ギロリ、と恐ろしい顔で悠也が弟を睨んだ。
怖…。
「うるさい!一緒の事務所だからって知り合いとは限らないだろ!」
あらまあ…。
悠也は俺の手にしていたCDをちらりと見た。
「なにそれ」
俺は慌ててCDを弟の手に返した。
「これ、マリさんと住吉さんが恋人やってるCD」
ちょ!余計なことを!!
思わず背筋をよくした俺の横を悠也が黙って通りすぎる。
くるりと振り返る悠也に、弟も姿勢を正してる。
「そんなの持ち歩いてるの?住吉?」
低い声で聞かれ、とんでもない!と首を振る。
「功也の?なんでそんな変態なCD持ってるの?お前?」
「あ、これは、その…。と、友達に借りて…」
しどろもどろな言い訳が可哀想だ。
マリさんの…ファンなのかな?
「ふんっ」
悠也が不機嫌に息を吐いて歩き出した。
慌てて追いかける俺の前で、いきなり悠也は立ち止まった。
「どうでもいいけど、功也。2、3日友達の家に泊るってお母さんに言っといて」
悠也の手には荷物が入ったボストンバッグが下がってる。
「あ、じゃあ、兄ちゃんちょっと預かるねー」
弟に手を振ると、
「余計なこと言うな!」
と、悠也が怒る。
「でも、俺ん家来るんでしょ?」
悠也の手からバッグを奪った。
ぷいっと顔を背けられても、可愛いと思えるよ。
胸の奥のチクリとした痛みは、いつか悠也が突いてくるだろう。
でも、俺。
それに触れて壊してくれるのは、悠也だと思ってるよ。
なんてね…。
甘えてるのは俺の方なのかな?
(おしまい)
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