*BL Original novel・4*

□Don't help me!
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気になる人がいます。
見上げた校舎に、窓辺に座るその人を時折見ることが出来る。そこは午後になると日が当たるので、きっとポカポカとしたその場所が気に入ってるんだと思う。その証拠に、今日はその図書室の窓辺の席で、コックリコックリ居眠りを始めた。その姿が、昔、家で買っていたウサギみたいで可愛い。

「おい!白井!ボーッと突っ立ってんなよ!」

部活の途中で顔を洗いに来た水飲み場で、数少ない蛇口の前をどかない俺を芹ヶ野先輩がどついた。

「す、すいません」

俺がどいた蛇口で芹ヶ野先輩は豪快に顔を洗った。そして犬のように顔をプルプルさせて水気を飛ばすと、まだ顔に残る水気を俺のシャツの腹んとこを無理矢理に引っ張って拭った。

「ちょ、ちょっと!」

「悪ぃ、タオル忘れたわ」

俺の目の前に立ち塞がった身長180超えの先輩の前で、15センチは低い俺はそれ以上文句が言えなくてただムスッとした顔で意思表示をした。だいたい!俺の前にしゃがみ込んでまでしてわざわざ顔を拭くことはない!ただの嫌がらせだ。

「腹が湿って冷たい…」

「走れば乾くだろ!ほら!行くぞ!」

バシンと尻を叩かれ、俺は芹ヶ野先輩の後を慌てて追いかけて走り出した。チラッとも一度見上げた窓から、こっちを覗うような視線を感じた。うるさくしてごめん…。
芹ヶ野先輩の後ろに続いて校舎の外周を走り始めた。グラウンドの横を通り過ぎるときに、

「うおーい!危ないぞー」

なんて声がどこからか聞こえて、俺は立ち止まってキョロキョロとやった。すると俺を突き飛ばすかのように芹ヶ野先輩が体当たりをかましてきた。

「ぐあっ!」

こけそうになる俺を腕でがっしり抱えながら、芹ヶ野先輩は、空から降ってきた野球の球を素手でパシンッ!と受けとった。

「よっ!ホームラン!」

と、陽気な声を投げかけながら、芹ヶ野先輩はグローブを構える野球部に球を投げ返した。

「まったく!お前は危なかっしいな!俺がいなかったらますます馬鹿になってるところだぞ」

すいません…、と頭を掻きながらなんとなく後ろの校舎を見上げた。すると、あの窓辺の主が、「わあ…」なんて感心した顔をしてパチパチと拍手なんかしていた。もしかして…。あそこからこちらを見ていたのは、芹ヶ野先輩を見ていたのかもしれない。確かに、芹ヶ野先輩はカッコイイ。うー、くそっ!

「負けませんから!」

俺は勢い良くダッシュをかました。アハハッと笑いながら芹ヶ野先輩は長い足で俺を追い越して行った。
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