*BL Original novel・4*

□恋とひまわりは夏に成長する
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(副会長:里見十以 視点)


もうすぐ夏休み。大事な三年の夏休みだ。
期末テストも終え、進路担当の教師との個別面談が済んだ今日、寮の部屋に帰ると、なんでかベッドの上で胡座をかいて瞑想をしていた暁が、カッと目を見開いて俺に、

「話がある」

と、深刻な表情のままで言った。
俺は向かいの自分のベッドに腰を下ろし、暁と向かい合った。

「何だ?」

もうすぐ夕飯だ。早く着替えてしまいたい。だいたい、暁のこういう態度の時の話は面倒事が多い。

「あのさ…、十以、進路…決まったか?」

俺が外部の大学を受験することは知っているはずだ。
「まあ…」
暁はベッドの上でぐいっと身を乗り出してきた。

「教えてくれないか?どこに行く?推薦か?受験か?どの大学に行く?どの学部を目指してる?」

「何言ってんだ。お前は俺の親か…」

窮屈なネクタイを外しにかかっていると、暁はベッドから飛び降り、俺のベッドの足元に正座をしてきた。そんな暁を見下ろすと、いつにない、真剣な眼差しとぶつかった。暁は、ギュッと両の拳を握り締め、言った。

「俺は、お前と同じ所に行く」

「は?」

学内トップの成績の暁は、国内トップの大学に行くだろうと思っていた。俺にも、なりたいものがある。その2つの希望が重なっているとは限らない。

「そういうふざけたことは先生に面談で言うなよ?ちゃんと自分の希望を…ヒッ!」

暁がいきなり俺の足首を掴んできた。

「俺は真剣なんだ!今だけはお前の得意のツンデレのツンは置いといてくれ!真剣に…真面目に聞いてる!俺の人生を賭けて聞いている!ストーカーか!?ってドン引きしてくれても構わない!……頼む…、教えてくれ…」

俺の爪先の床に額を擦り付けるように土下座をしながら、暁が訴える。正直、引いてしまうが、先に引いて構わないと言われて引いた素振りを見せるのも癪に障る。

「なんなんだよ…、一体…」

俺の戸惑いの声に暁はパッと顔を上げた。

「俺はお前の恋人だ!」

その暁の眼光の鋭さにドギマギして、思わず目を逸らしてしまった。

「だ…、だけど…、こ…、恋人だからって…、何も同じ大学行かなくても…」

「駄目だ!」

鋭く叫んで、暁は俺の足元ににじり寄った。

「俺は!お前と離れていてお前の心を繋ぎ留めておく自信がない!誰よりもお前のそば居たい!お願いです!卒業後も俺のそばに居て下さい!この寮を出たら、俺と一緒に暮らして下さい!同じ学校に通わせて下さい!ずっとお前のそばに居させて下さい…」

この、俺の足元で蹲っているのが、うちの学園のお気楽脳天気元気バカカリスマな生徒会長殿だなんて…、俺以外の奴が見たらとりあえず驚くだろう。その程度で済めばいいが。
……というか、今、こいつサラリと卒業後の俺の居住についてまで提案してきたような?

「暁…。でもさ…。この学校卒業したら、広い世界にはいろんな人がいっぱいいるわけだし、そしたらお前なら、きっと女の子だって寄ってくる…、ウッ」

ガシリ、と暁に手首を捕まえられた。

「俺の恋心を舐めんな。俺にはお前しかいない!一生、ずっとお前は俺のものだ!」

ストーカーか!ってドン引きかましていいですか…。

「お、お前の面倒を一生俺に見ろっていうのか?」

とにかく何か言い返さなくては、と口から出た言葉に、暁はニッと笑って返した。

「俺が、面倒見るよ。炊事洗濯掃除買い出し、なんでも任せて下さい。俺の生活能力見くびるなよ」

「そ、そんなこと言ったって…、知らないし…」

確かに、自分の身の回りのことくらいはきちんとしている暁だけど、こんな至れり尽くせりの全寮制の学校の中じゃ、生活能力などわからない。

「俺、飯作るのすっげー上手いぜ?こんど十以に食わせてやりたいなあ…。あっ!そうだ!夏休みにさ、うちに来いよ!泊まりがけで。将来の旦那様を試食させてやるからさ!」

「試食って…」

こいつの、悪い意味での頭の回転についていけない。

「こっちのほうの試食も…っ!」

蹲っていた暁が、突然立ち上がり、ガバっと俺に飛びかかってきた。ベッドに押し倒されながらも、本能で拳を振りかざした。

「…痛い…」

暁は片頬を押さえ、元いた場所に蹲った。

「着替える。飯に行く」

ベッドから降り、制服を脱ぎ出した俺の後ろで、暁が俺を覗うように気弱な声で言ってきた。

「夏休み…うちには遊びに来てくれるよな…?」

きっと、俺が、「ああ」と一言頷けば、きっと、夕食の食堂は、賑やかな俺様会長のお祭り騒ぎが待っている。
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