*BL Original novel・4*
□王様と女王様と
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「頼むから、いい子で、よろしく頼むよ!」
俺は、事務所の応接室に勢揃いした面々に順番に視線を流しながら言った。
今日はここで雑誌のインタビューを受けてもらうことになっている。数名集めて和気藹々とやる座談会のようなものだそうだ。
応接室に集めたのはうちの事務所に所属する役者たち4人。
2人がけのソファーに仲良く座るのは宮元と木月。木月は待たせている間は台本を読んでいたんだろう。胸に台本を抱え、俺に対して「はい!」と素直に返事を返した。
宮元は長い足を投げ出して、ソファーの背凭れに両腕を掛けて大あくびをした。
宮元達とテーブルを挟んで向かいのソファーには、岩井と住吉。
岩井は少し緊張した面持ちで姿勢よく座っている。フリートークは苦手だと言っていたっけ。
住吉は耳につけていたイヤフォンを外して、不必要なくらいの笑顔を俺に見せた。楽しそうだ。
スケジュールの都合もあるが、うちのイチオシ達でもある4人だ。
……だけど、不安を感じる4人でもある。
程なくして、応接室のドアがノックされ、雑誌の人とカメラマンが部屋に入ってきた。
「はじめまして!○○社の椎名と申します。本日はよろしくお願いしますー!」
俺は胸ポケットから名刺を取り出すと、
「キーボイスの神崎と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
と、営業の挨拶を交わした。
俺の後ろで、スクっと誰かが立ち上がった。
「キーボイス所属、宮元総です。どうぞよろしくお願いします」
宮元の、一瞬で切り替わった営業モードに驚いた顔をしながら、他の面々も挨拶を口にした。
ふむ。こういうベテランの見習うべきところはぜひとも見習って欲しい。
椎名さんという美人の記者さんは、居並ぶ役者たちを見て、はしゃぎ気味に言った。
「本日は、キーボイスの仲良し4人組の紹介ということで、楽しくお喋りをしているところを取材させてもらおうと思ってまーす!最初は質問に答えていただくという形ですが、どうぞ、普段通り、ご自由に話されて構いませんからね!」
記者さんは俺のすすめた椅子に座りながら、チラリと宮元を見た。宮元は直ぐ様その視線に反応し、ニッコリと微笑みを返した。椎名さんの頬が、ポッと赤く染まった。
…これが宮元の営業モードか…。俺も見習わなければ…。
「えっと、最初の質問いきますね!皆さんの、尊敬する声優さんを教えて下さい」
その質問に、ピキーンッと一瞬空気が固まる。おい!そこ!固まるとこじゃないから!
「み…、宮元さんです!」
木月が隣に座る宮元を覗いながら言った。よく言った!とは思うが、そこは、ビクビクとせず、笑顔で言って欲しかった…。
「僕もやっぱり宮元さんです」
岩井が棒読み気味にそれに続く。住吉までもが、
「じゃあ、俺も!」
なんて言う。
これではまるで、宮元は、王様だ。
だけど、宮元は嬉しそうに目を細める。人前だというのに、木月の頭をナデナデと撫でた。
「じゃあ、俺はマリで」
「マリさーん!ご指名でーす!」
宮元の言葉を住吉が茶化す。
「みなさん、仲がいいんですねー」
記者さんは微笑ましい目で皆を見る。そんな記者さんに、宮元は、流し目のような色男モードな視線を送り、腕を組むと偉そうに言った。
「そうですね。皆、芝居の仲間ですし。一つ釜の飯を食った仲間といいますか、運命共同体と言ってもいいくらいですからね」
おお…。なんて、宮元以外の全員が感心してしまった。って、俺まで感心している場合ではない。