*BL Original novel・4*

□王様と女王様と
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「素敵ですね!…あ、ちょっとすいません!」

記者さんは震え出した携帯を握り締め、応接室から出て行った。
その途端、

「宮元さんと毎日一緒にご飯を食べてるのは木月だけ、だけどね」

と、岩井がしれっとした顔で言った。さっきまでの緊張した顔はどこへやら…。

「一つの炊飯ジャーからご飯ですか?!アハハハ!悠也、面白い!」

住吉が岩井の肩を叩きながら笑う。岩井は顔をしかめる。

「てめ!尊敬してるんだろうが!俺のことを!」

宮元はテーブルの下から足を伸ばして住吉の脛を蹴る。テーブルの上に置いてあったコーヒーカップの中のコーヒーが揺れる。

「あつっ!」

コーヒーが木月のズボンにかかる。

「ん、もう!宮元さん!何してるんですか!」

木月が怒る。

「住吉のせいだろ!」

「何で俺が!」

「ぷっ!木月のその染みの場所、恥ずかしいね」

ギャーギャーワーワー始まった…。うるさい…。俺は額に手の平を当てた。頭が痛い連中だ…。
一喝して黙らせるべきか悩んでいると、

「すいません!楽しいお話の最中でしたのに…。あ、あの、どうかしましたか?」

記者さんが部屋に戻って来てしまった。
そのとき、動いたのは…、岩井だった。

「すいません。少し時間を下さい。住吉!ふきんを持って来て。キッチンにあるはず。木月、水洗いでいいからそこ、ちょっと洗って来い。宮元さん、…じっとしていて下さい。神崎さん、コーヒーのお代わりを。それと、記者さんにコーヒーがまだですよ?」

「は、はい!」

岩井の言葉に、皆てきぱきと動き出した。(宮元は動かず)俺も気が付けば、コーヒーを運んでいた。
…そういえば、岩井はこの場では宮元の次に年長者だ。身体が小さく線の細い女顔のせいで、その貫禄を忘れていた。

「お騒がせしてすいません。さあ、続けましょうか?」

そして、何事もなかったかのように澄ました口調で岩井が言った。
その岩井の風格はまさに、…女王様だ。

「騒々しくてすいません」

謝る俺に、記者さんは、ぽわっと、夢見る乙女な目付きになった。

「いえ。やっぱり、部屋の外で皆さんのお声だけ聞くと、物凄―く!カッコいいですよね!」

「ブッ!」

宮元がコーヒーを吹き出した。

「あー!なんで僕にかけるんですか!もう!シャツに飛びました!!」

木月が慌てる。

「アッハハハハハ!」

住吉がバカ笑いをする。

「うるさい!」

岩井が怒鳴る。



あー…、俺も、部屋の外で声だけ聞いていたいものだ…。



(おしまい)
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