BASARA 佐幸佐 SS

□こぼれる。
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「ふふ…」
旦那がふいに笑った。
「ず…、あに?」
手を引かれ、後ろを歩く俺を振り返る。
「いや、お前のそのギャップはいつも楽しいな」
う…。
「戦場での佐助は鬼だが、某の前では…」
なんだろう?
「犬だな」
うう。
しかも、さかりがついてる、とか言いたいのだろうか…。
「俺は…同じだよ…」
言い訳しておこう。
「お、俺様はさ…、戦場でもいつでも今でも…、旦那しか見えてないだけだ…」
俺の手を握る旦那の手が、かっと熱くなった。
「そ、それもそうでござるな」
後ろから見える耳が赤いや。
ん、もう!
「もう!あーるーけーなーい!」
草むらの中にドスンと腰を下ろした。
旦那の手も勢いよく引っ張ったから、旦那が俺の胸に倒れこんできた。
ちゃんと、がばっと抱きとめる。
「う、うわ。お前のマント濡れてる!」
すいません…。涙と鼻水で…。
「わかった!脱ぐよ!」
「お、おい、こら、佐助」
「濡れたから脱ぐ!」
言われてもないのに、手っ甲やら、鉄の胸当てやら、がちゃがちゃ外し始めた。
泣いてツンとした鼻で、
「はっくしょん!!」
とくしゃみをしたら、さすがに旦那が呆れた顔をした。
「旦那!寒い!」
「え…」
「あっためてよ…」
「こ、こら…」
旦那の剥き出しの腹筋から、手を滑り込ませた。
ほんっと、この人の肌、あったかい…。
「そ、某は、こんな急がなくても、ちゃんと…帰ったら…と…」
旦那がかわいく口ごもる。
ああ!もう!
もう、今、いただいていいですか?ご褒美。
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