*BL Original novel・1*
□ボイスん。アタック@
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「え? チケット持ってないのか?」
マネージャーさんは驚いたような声を上げた。
持ってなかったのって、だから今僕にチケットくれたんじゃないの?
「先生も出てるし、行きたいなあって思ってたんですけど、前売り券売り切れで買えなかったんです」
先生とは養成所時代の先生のこと。もちろんここの所属声優さんだ。
「木月…、このお芝居、うちの製作なんだけど。チケット欲しかったら言いなさい。それに、出演者に言えばたいていチケットは手に入る」
「えー!」
知らなかった……。そんな裏側の知識(?)までまだ持ち合わせていないし。一般ファンよりも情報に疎いひよっこです……。
「まあ、よかったな。こっちも助かる。渡さないと宮元に後で何言われるか……」
「僕も嬉しいんですが、僕が使ってもいいんでしょうか? このチケット」
「違ったら違ったで、まあ、ばれないかもな。いちお事務所関係者なんだから、居てもおかしくないだろ。そんなことよりも、時間、急いだほうがいいぞ」
そんな、適当な……と、チケットに目をやると、ぬ!
これ、今日の日付、今日のこれからの時間じゃないか!
「うわ、開演七時って、あと一時間ないじゃないですか!」
「そういうことだ。とりあえず急いで行ってみ。あ、こら。台本も大事に扱え」
取り落としそうになった台本を慌てて抱え直し、僕は頭を下げて、出口へと向かった。
「失礼しました」
マネージャーさんがにっこりと笑顔で見送ってくれた。
ドアの外、握りつぶしそうになったチラシを広げる。
地図の案内によると、劇場はここからなら地下鉄で二駅くらいだ。何とか間に合いそうだ。
とりあえず、走り出した。