*BL Original novel・1*
□ボイスん。アタックA
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いつの間にか、宮元さんはビールから水割りに変わっていた。
頬杖を付きながら、たまに片手でグラスを持ち上げ、中の氷をカランカランと回す。
物凄いかっこいい。
大人の男の人って感じだ。
僕はその姿を見つめては、慌てて箸を口に運び、バカな話を続ける。
だけど、まだ早いこんな時間にラフなジーパン姿で、ちょっとぼさぼさ気味の髪型は、んー……サラリーマンには絶対に見えないよな。
業界人?
んー、自由業?
どう他の人には見えるか分からないけど、これが、あの『宮元総』だとはみんなわからないんだろうなあ。
っていうか『宮元総』って言っても普通の人にはあんまりわからないかも。
声優さんの名前まで知っている一般人ってそうはいないもんなあ。
でもでも、声を聞かせれば、「ああ、どこかで……」ってなるのかな? 姿もこんなかっこいいなんて、考えることもないんだろうなあ。
「僕が始めて宮元さんの声を聞いたのは、小学生の頃だと思いますよ〜」
「おいおい、まじかよ。俺もオヤジだなあ」
苦笑しながら宮元さんが言った。
「あの、「地球の平和は俺が守る!」って台詞はよく真似してましたよ」
「あー、あれかあ……」
カランコロンと氷が鳴る。宮元さんの目元が仄かに赤い。僕なんか、ろれつも危ないけど……。
「あれは、俺のデビュー作だったからな。えー、十八歳のときだ」
「あれー? 宮元さんって、いまいくつですか?」
えーと、僕が小学生……何歳のときに見ていたアニメだろう?
「なにそれ? 年寄りに見えるってこと? あん? オヤジに見えるってこと? んー?」
えーっと、あのアニメのプラモデルとか流行っていて、高学年まで作っていたなあ……。
「おーい、注文!」
不必要なほどに店内に響き渡る声で、宮元さんがウエイターを呼びつけた。