*BL Original novel・1*

□ボイスん。アタックD
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地下鉄から繋がる私鉄の駅で降りた。

紙に書かれた地図では、この駅のすぐそばだ。ただ……『このあたりのマンション』とだけしか書いてないし……。

分からん。

宮元さんに電話を入れるしかないか。
勢い付いてここまで来てしまったけど、確かに突然ドアをノックするわけにもいかないかな? 
いや、それで「帰れ」って言われたら、薬だけ置いて帰れるから、そっちのがいいんだけど。
今電話で「帰れ」って言われたら、ちょっと悲しいかも。

ええい! やっちゃえ!
僕は、携帯を取り出した。
寝てるかな? 怒られるかな……。
電話が繋がる。

「……はい」

出た!

「木月です。あの……、具合は……」

「んー、お前が起こさなければ良くなるかも……」

う。
寝てたんだ。悪いことをしちゃったよな……。

「薬とか持ってきたんです。その……、たぶん、宮元さんのマンションのそばに居るんだと思うんです……」

「ん?俺の?」

低い声がやっぱりかすれてる。

「は、はい。あの、家の場所、教えてもらっちゃって。すいません、勝手に!あの…今、駅なんですけど、そこからは分からなくて……」

ごほっとまた咳き込んでる。そして……笑ってる?

「……駅から茶色いレンガのマンション見えるか?」

僕は周りを見渡す。
あった!

「は、はい」

「そこの三0一。待ってるよ」

怒られなかった!
駅前のロータリーを突っ切る。
商店街は夜の明かりが灯り始めている。
冷たい風が、僕の服をはためかせた。
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