*BL Original novel・1*
□ボイスん。アタックF
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「うわあ!衣装、着たんですね!」
『王様』の衣装は豪華!
似合いすぎてドキッとした。
そしてどう見ても王様に見える。
それ以外には、見えない……。
「ああ。もうすぐぶっつけゲネプロやるぞ」
「ゲネプロ?」
「……ったく。今すぐ本番がいいのか?最後に、照明も音も当てて、舞台でやっといたほうがいいんじゃねえの?」
「も、もちろんです」
通しでやるのか……。
夜の本番前にへばりそう。
「そうだ。マリ、こっち来てみろ」
腕を引かれて、ロビーの入り口までやってきた。
受付が用意されて、その周りには、きれいな花の飾りが並べられていた。花には『〜さん江』とでっかいカードが添えられている。
「あ……。僕の名前……」
なんと!
『木月真理さん江』の花飾りを発見!
う、うそー!
送り主は僕がレギュラーで出ているアニメのスタッフ一同となっている。
感激……だ。
「お前のやつの、隣も見てみろよ」
僕宛ての名前が記されたカードの隣には、
『宮元総さん江』のカードが並ぶ。
「何だか、結婚式見たいだろ?」
ニヤッと笑う。
なんてことを!
きゅ、急に緊張が……。
変な緊張が……。
「宮元ちゃーん。ちょっとステージ見てもらえるかー?」
スタッフの一人が呼んだ。
演出家と出演者を兼ねる宮元さんは、やっぱり忙しそうだ。
「あん? ブタカンに聞けよ!」
「ブタカン?」
「舞台監督!高岡に聞けよ!あいつがブタカン!」
ふうっと、宮元さんは怒鳴った後に息を付いた。
「お前の緊張でも解いてやるかって考えてっと、当のお前は「ブタカン?」だよ? 緊張どころか、頭が寝てるぞ?」
「あ、う、うん……」
全然実感が沸かなくって。
動き回るスタッフさん達を見ても。僕とは違う世界に見えた。
……ずいぶん前になるんだな。
ここに観客として芝居を観に来たことは。
もう、僕はここの世界の人間なんだ!
ああ、やっぱり緊張が沸き起こってきてるよ!
実感するものじゃない!
「頼むぞ、マリ……」
「はい! あ、僕トイレ行って来ます」
わああん。
逃げ出したくなってきた。