*BL Original novel・1*

□優しい傷@
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シャツは腰の辺りに絡み付いていたから、引き上げて羽織る。泥だらけで湿っていて気持ち悪いけどさ。ボタンもいくつか無いよ。
ズボンと重なって脱がされた下着はきれいでちょっとよかった。

やばいな……。
財布と携帯電話が見当たらない。別の場所に落としたのかな。

腕時計の時間は見えない。

どうやって帰ろう?
財布が無きゃ、帰るに帰れないけどね。

だいたい、ここがどこなのかもわからないんだ……。

剥き出しの木の根っこと小石だらけの土に、僕はまた座り込んだ。

こんな山の中で、どこに行けばいいんだろう。

僕の周りを不気味なほど静かな木々が取り囲む。
膝を抱え込むと、体のあちこちが軋んだ痛みを訴えた。

情けな過ぎ……。

涙が滲んできた。



さっき、強姦された。


丸まった僕は、ちょっと前のことなんか考えないで、ただ、おなかがすいたな、なんて考えるようにするだけ。

この星空が、最期に見た思い出になりませんようにと、ぼんやりと……。
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