*BL Original novel・1*

□ボイスん。レッスンact.1
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「きちゃいました!とうとう僕にもきちゃいましたよ!」

僕は部屋のドアを開けるなり叫んだ。

「るっせーなあ。頭に春が来たのかよ」

宮元さんは読んでいた台本から顔を上げた。

「何言ってるんですか!僕にもとうとう……あー!僕も大人なんですねえ……」

僕は興奮したまま、宮元さんの居るソファーの横に座った。

「赤飯炊いてやろうか?」

うっとおしそうな顔で変なことを言う宮元さんに、僕の手に持つ、一冊の台本を掲げて見せた。

「アダルト系だって!」

宮元さんは髪をかき上げて、僕の手から台本を奪った。

「お前、これ……ホモもんだぞ!」

僕の台本を床に投げ捨て、宮元さんはメチャクチャに髪の毛をかき上げた。

「んなもんに、お前を出すわけにはいかねえだろうが!」

物凄い形相で睨まれた。


僕が声優事務所の所属になって1年が経った。この一年で結構成長したと思う。
大きな変化は……バイトを辞めたこと。
この職業一本で食べていけるようになったわけじゃない。宮元さんのマンションになんでか……流されるように転がり込んだから、家賃の心配がいらなくなっただけだ。

このこわーい宮元さんは怒鳴りながらも、そりゃ、怒鳴られると怖いけど、僕の心を鷲掴みにする声の持ち主だ。
世間的評価は高い、人気声優さんだ。

「お前、これ読んだのかよ!読んだ上で浮かれて俺に見せたっていうのか!」

隣に座る僕の腕をぎゅっと掴んだ。
痛い!

「ちゃんと!事務所で話も聞きましたよ! それでどうする?って聞かれましたよ!僕は受けるって言ったんです。人気のある作品だって聞いたし。向こうからのご指名だって聞いて、僕はやります!って言ったんです!」

僕は必死に宮元さんに喰らい付いた。
だって、やっぱりご指名は嬉しかったんだから。そんな話のジャンルがどうのなんて、全然関係ないじゃないか。人気のある作品ということは、いい話に違いない。
宮元さんは、僕の腕を掴んだまま立ち上がった。僕も引き摺られるように立ち上がる。

「お前が本当に、これ、出来るって言うのなら、俺に証明して見せろよ」

宮元さんは、僕の台本を口元に当てて、にやりと笑った。
証明って……。

「台本どおりにやってもらいましょうか?」

とっさに逃げようとした僕を抱え上げ、寝室へと続く廊下へと向かった。

どうしてこうなるんだよ!

「離してください!まだ全部は読んでないんです!」

ドカッと乱暴にドアが開けられ、僕はベッドに降ろされた。

「何でこうなるんですか?!」

宮元さんは僕に馬乗りになったまま、台本を捲った。

「ふむふむ……。おい、マリ!嫌がってるのを無理やりって設定じゃないみたいだぞ」

それは今の僕の状況だ! 

宮元さんは、片手で台本を器用に持ち(慣れているだけある)片手で僕の頭を抱え込んだ。

「僕……、今、そんな気分じゃないです!」

頭を振ってもがいてみる。

「レッスンだよ。上手く出来なきゃ、俺が行って、断ってくるぞ、これ」

そんなの脅しだ……。
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