*BL Original novel・1*

□ボイスん。レッスンact.1
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「そう、いい子だ……。あ、ちなみにこれはもう台詞だからな」

甘い声で耳元で囁かれ、僕は抵抗をあきらめた。

いっつもこう、強引だ!
でも、すぐに蕩かされてしまう。
ほんと、ずるいや。

「かっこ、キス。その後に、お前の台詞は、『ん、てんてん』」

「ん?」

「キスしながら言うんだよ」

少し後ろ髪を引っ張られて上を向かされた。

唇が降りてくる。
唇が塞がれ、喉の奥から声が出た。

「ん……」

とろりとした頭の中で、あ、なるほど何て冷静な僕が居た。
「ん」はここから出る声なんだ……。

「上出来…」

そっと目を開けると、宮元さんが髪をかき上げながら言った。目を細め、口元が微かに上がっている。

「お前はもう、こんなになってるのか」

宮元さんの手が、するすると僕の腰元を撫でた。

って!
僕のそこ!
ま、まだ!なんともなってないし!

「タモツさん、ボク、もう!てんてん」

裏声まで使って、僕が言うべき台詞を指示する。

もう!って何だよ!
もうもうもう!

ゆっくりと指先がシャツの裾から滑り込んでくる。
なぞるように、滑るように……。

「あ……」

「あ、はまだだよ」

また意識に冷静モードが戻った。

「やめてください!頭がパニック起こします!こんな、台詞意識しながら何て、出来ないです!」

本番で…台詞と行為が結びついた映像が頭に浮かんだら、パニックどころじゃないぞ!
それだけは…
それだけはいやだあ!

「…泣くこたあ、ねえだろうが…」

な、泣いてない…。
は、鼻がちょっと詰まっただけだ…ぐし…。

「…悪かった…。って、そんなんで、出来んのか?」

ぐし…。
どだろ…。
宮元さんが、大きな手で僕の頭を撫でてくれた。

「…さて。続きするぞ。お?展開早いな、これ。「痛いかい?」って、もうやってんのか…」

ええ!!!
普通(?)ごめんな、もうやらないから、とかじゃないのか?!!

物語の展開の速さに合わせて、服を剥ぎ取られ、圧し掛かられたら…。

頭にきて、宮元さんの手から台本を叩き落とした。

「演技で気持ちのいいふりしましょうか?!」

顔から火が出そうだけど、言ってやりましたよ!

宮元さんの目がまん丸に見開かれた。

「…言うようになったねえ…。お手並み拝見!」

う、うわああ…。

あ、だの、ん、だの…

こんな声を要求されたらどうしよう!


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