*BL Original novel・1*
□ボイス…あ。
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もっかい芝居やらせろって言ったら、渋りやがった。
予算がどうの、役者たちのスケジュールがどうの…。
ぶち切れて怒鳴りつけてやったら、張り手を残して社長室に消えていった。
あー…。
面白くない…。
所属していた劇団も潰れた。
離婚もした。
めんどくさいことに仕事は休みがない。
あー…。
テーブルに両足を投げ出し、頭の後ろで腕を組み、天井を仰ぐ。
後頭部打って死んでも構わないよなあ…。
「あーおもしろくねえなあ…」
ガチャリ、と部屋のドアの開く音がした。
ただ顔を向けただけなのに、入ってきた新人ぽいマネージャーは、
「ひーーー!み、宮元さん!い、いらっしゃったのですか!!す、すいません!!」
と直立不動で真っ赤な顔をした。
「あー?別に〜どうぞ〜」
すいません、すいません、とそいつは俺の前を通り過ぎる。
「すいません。あっちのデッキ調子悪くて。応接室のテレビで録画させてください」
「ん〜?」
なんか一生懸命DVDをセットしてる。
見るとは無しに見ていたら、
「次、うちのキャスティングなんで。録っておかないと」
と必死にリモコン操作しながら言ってきた。
「偉いね〜」
「は、はい!ビデオ録ってない?ってたまに聞いてくる人もいるんで。やっぱ、実際の放映されたやつみたいのかなって…」
どうでもいいねえ…。
ずるっと滑った椅子の足に少し焦りながら、テーブルに突っ伏す体勢に移った。
眠くなった…。
「しっつれいしましたー!」
逃げるようにそいつは去って、また俺一人。
独立すっかな…。
個人事務所…うは、面倒くせえ!
なんか、こう、なんか、なあ…。
くだらないこと考えながら目を閉じたら、胸のあたりがむかついて眠れない。
「…あ」
え?
いきなり、息が止まる思いがしてがばっと体を起こした。